ああ、我が身内 |
「政宗君、少々やり過ぎではないかね?」 「……ジェントルが何の用だ」 興味もないように視線を寄こしもしない政宗に義光は眉根を寄せる。 自慢の妹の子で自分なりに可愛がってきたが、この子供は自分に懐いているそぶりも見せない。 紳士である事を信条とする義光は互いに目を見て話しをするのが当たり前だと思っている。 だから政宗の前に回り込んでその目を覗き込んだ。 その行動に政宗は身体ごと向きを変えた。 嫌がっているのが良く分かる。 「せっかく私が応援をしてあげたというのに、なんだねこれは」 そういって義光は昨日届いた文を広げて見せた。 それは政宗がしたためて送った物で、ちらりと一瞥をした政宗は感情の宿っていない瞳を義光に向ける。 それがなんだと言わんばかりの政宗に義光は落胆を眉間の皺に顕わした。 「……はっきり言って、失望したよ」 誇りが高い義光はどうしても政宗の行為が許せなかった。 「聞いているのかね、政宗君?」 「…うるせえな。過ぎたことを一々。しつこい男は嫌われるぜ」 不機嫌な政宗に義光はどういったものかと思案する。 このままではいけない。 これでは、伊達がだめになるだろうと必死に説得をするが本人は聞いているのかすら分からない。 意識すら此処にはない気がした。 何も言えなくなった義光に、政宗は一言「帰れ」と言う。 「政宗君!」 尚も食い下がろうとした義光に今度は「小十郎!羽州の狐のお帰りだ。送ってやれ」とさっさと踵を返してしまった。 追い出される形で城を出た義光は深いため息をつく。 とぼとぼという効果音が聞こえそうなほど寂しそうな去り方に門番は首を捻ったのだった。 途中、馬に乗った義光は政宗の感情のない瞳を思い出した。 彼の行った撫で斬りは、奥州では前代未聞。 これから伊達政宗がそのような目で見られるのか、義光は髭を撫でながら思う。 どちらにしろ、彼が強くならねば生き残れないという結論が出た義光は甥の事を思い、呟いた。 「君は今も私にとっては甥なんだよ」 妹の、自分の血も引く政宗が撫で斬りなどという愚かな行いをしたことに腹は立ったが、それでも。 自分の血を引く者を、愛おしく思わないわけがないのだ。 そしてすぐに草の者から、拉致された彼の父親を彼自身が打ち殺したと報告を受けた。 あとがき 史実的には腹黒く政宗とは犬猿の仲だという最上義光さんですが、私の筆頭至上主義フィルターの前では見事に政宗好きに変換されてしまいました。 いえいえ、シリアスも真っ黒も好きですが。 そこで義光さんのキャラを考えてみた。 ナルシストでデレ?ナルデレ?(なんじゃそら)でもめんどくさいのでこれで行くことにします。 ← |