執着Auge4


「優しく丁寧に愛してあげたいのですが、やっと名前さんが手に入るのだと思うと抑えきれません」

震える右胸を包み込むようにアーデルハイドの手が添えられる。軽く押され、ふに、と形を変える。恥ずかしいことこの上ないが、抵抗した分だけ長く続くのは間違いないので耐える。

「あなたの胸を揉む想像は何度もしましたが、想像よりもこれは…」

とても嬉しそうに、両方の手のひらで撫で始めた。二つのふくらみの下側から頂点を越えて上側まで。次に外側から内側まで撫でさする。アーデルハイドの男にしては綺麗な指で、盛り上がりの余すところなく撫で回される。名前はその動きを見たくなくて目を閉じた。
アーデルハイドは名前の胸が気に入ったのだろうか。ぎゅうぎゅうと絞り込んで、そのもちもちとした弾力を楽しんでいる。白乳に指をくい込ませ、全ての指を滑らかに動かす。揉まれている内に乳首が敏感に反応して、むくむくと起き上がってくる。

「綺麗な色ですね。すごい…、こんなに勃ちあがって」

アーデルハイドは、その勃起した乳首を優しく撫でさすった。アーデルハイドの手のひらに突き刺さると同時に、名前の身体に甘い刺激を送り込んでくる。

「や、ぁあっ」

ピリッとした感覚に身を震わす。次の瞬間、アーデルハイドはいきなり乳首をきつくつまんだ。

「んぅっ!」

極力声を上げたり、反応しないでおこうと思っていた名前もたまらず喘ぐ。それを見て、ぎゅっ、ぎゅっと、何度も乳首をつまむ。

「可愛い…おいしそう」

名前の眼下で、アーデルハイドは桃色に火照った乳肌に舌を這わせる。温かく湿った舌で舐められ、名前の身体に新たな快感が駆け抜ける。アーデルハイドの舌が、だんだんと頂点にある突起へと近付いていく。乳輪へと達した舌は、ぐいと乳房を掴んで先端を突き出させ、乳首をぺろりと舐めた。

「ひ…ぁん、…ぅっ」

名前の身体がビクッと跳ね上がる。温かい舌で勃起した乳首を舐められる快感は格別だった。そんな名前の反応を見ながら、アーデルハイドは舌を尖らせて乳首の側面に添えた。そして一気に舐めるのではなく、細めた舌先でつつ…とゆっくり舐め上げる。舌で押されるのに合わせ、くにゃりと曲がる乳首。根本から先端へ、舐められる度にその向きを変える。
もっと強く舐めて欲しい…そう願ったその時、アーデルハイドは舐めるというより、弾く勢いで舌を動かした。

「あ…ぁ、だめ…ぇ」
「気持ちよさそうですね」
「は、やぁ…」

鼻にかかった甘い声が漏れると、心得たと言ったようにアーデルハイドは同じように何度も乳首を舌で弾く。唇を開いたかと思うと、乳首に寄せて唇で挟み込んだ。そして、ちゅっちゅっと唇で引っ張っては離す。ビリッとした快感が走り、乳首も胸も、どんどん熱さを増してくる。それに呼応して、股間の方からもじんじんとした疼きが感じられる。名前の息が荒くなってくる。
名前は、内ももを伝う温かい粘液の感触を感じた。弄られているのは胸なのに、秘所から蜜液がたらたらと流れている。「こっちも触って」と言わんばかりに、ずくんずくんと痛いほどに疼いている。

もどかしさに擦り合わせる太ももに気付いたのか、アーデルハイドの手が濡れた股間に伸びる。指を二本揃えると、すいっと陰核を撫で上げた。陰核の両端に人差し指と中指の先を添え、小刻みに左右に揺さぶり始める。強い快感が電撃のように途切れることなく名前の脳髄を打つ。
アーデルハイドが揺さぶるのに合わせ、愛液が飛び散ってぴちゃぴちゃと内ももにかかり、たまらず腰がくねる。

「あっ…、ぁあっ、ん、あぁああっ!」

全身に力が入り、足を震わせ、肩で息をする。大きな快感の奔流が身体の中心を貫き、同時に目の前がチカチカと点滅した。
そのまましばらく、何も考えられずにぼうっとする。アーデルハイドはじっとして動かず、そんな名前の様子を眺めていた。

「本当は、エレベーターの中で二人きりで話せるだけで満足だったのに。あなたがあんな、恥辱に耐えるようないやらしい顔をするから。私をこうさせたのは、煽ったのは、あなたです」

アーデルハイドの人差し指と中指が、今度は、膣口の左右の縁に押し付けられる。自転車を漕ぐ足のように指を動かし、くちゅくちゅと音を立ててその内側を擦り始めた。息を吐き出すことも忘れてしまう程の強い波に腰が浮く。
ひとしきり秘所を掻きしだいた後、アーデルハイドは指を止めた。

「すみません。私ももう、我慢の限界です」

ズボンの前をくつろげ、挿入の快感に期待を膨らませ雄々しくそそり立つ欲望の証を一瞬だけ視界におさめ、激しい動悸に襲われた名前はすぐに目を逸らした。
性欲のなさそうな顔をした王子様も、こうして欲情するのだ。清廉潔白で「皇族じゃないか」と思うくらいに、ほとんどリアリティを持たない程上品なイメージの王子様からはかけ離れた欲の形はとても生々しく、その欲は、紛れもなく名前に向けられている。
パンパンに膨れ上がった肉欲を詰めたアーデルハイドのものに、男性経験のない名前は、こんなものが自分の中に納まるのかと恐怖ですくみ上がった。それでもアーデルハイドを止められないのは分かっている。それは諦めか堕落か。

「…初めてだから、痛くしないで…下さい」

名前の言葉を聞いた途端にアーデルハイドは息を飲んで顔を輝かせた。

「ああ良かった!初めてなのですね。私が名前さんの初めてを頂けるのですね!あの男に取られてしまう前で本当に良かった」
「…あの男?」
「あなたの同期の、懇意にしている男です」

名前の頭に一人の男の顔が浮かぶ。
同じ年に入社して、今は同じ部署で一緒に仕事をしている仲のいい男。やや体育会系で爽やかで、気風のいい、アーデルハイドとは似つかない若武者のような男。面倒見のいい好青年というところは似ているかもしれないが。

「あの男と名前さんの間に何もないことは知っていましたが、私の知らないところで間違いがあったのではと心配していたのです。あなたが大学生の頃に付き合っていた男と肉体関係がないのも把握済みですが…本当かは怪しいところでしたし」
「………え?」
「あの男とはよく飲み会もしているようですし、飲みすぎたあなたをあの男が送ったこともありましたよね。その頃から社内であなた達が付き合っているなんて噂も流れたりして…そろそろ何とかしないとあの男に取られてしまうと、嫉妬でどうにかなりそうだと思っていたところだったんです。行動に移す前に、あなたから弱みを握らせてくれたので助かりました。もっとゆっくり仲良くなるべきでしたが、中々名前さんと話せる機会が掴めず…それは臆病な私の不徳の致すところです」
「…………なにそれ、何でそんなこと知ってるの?……気持ち悪い」
「好きな人のことは何でも知りたいのです。それに、元より好かれていると思っていません。だって、ずっと名前さんのことを見ていたのに、名前さんは私を一目たりとも見てくれたことがないのですから。だから何をしても、少々卑怯な手や金や権力を使ってでも手に入れようと決めました。色々と葛藤はありましたが」

一息に喋り終えると、首筋に音を立てて吸いついた。痛いほどに吸われた肌を舌先で舐め、アーデルハイドの唇が離れていく。

「もう私のものだって示すように跡がつきましたね」

唾液で光るアーデルハイドの唇が、ゆるやかな弧を描く。薄ら寒く感じていたものの正体がはっきりと分かる。
ーーこの人、まともじゃない。
何としても逃げた方がいいと名前の本能が警鐘を鳴らす前に、アーデルハイドは名前に覆いかぶさり動きを封じる。

「大人しくしてください。縛り上げてここに監禁してもいいんですよ。あまり手荒が過ぎるのは好みませんし、あなたもそうされたくないでしょう?」
「ま、待って、やだ…!」

怖くて歯の根が噛み合わない名前のひくつく穴にぬめる先端を押しつけ、めりめりと内臓を裂くように硬く熱い肉が中を味わおうと押し進む。
指で中奥を慣らしたとは言え、比べ物にならない程の圧倒的質量が秘洞を襲う強烈な痛みに、名前の意識は持っていかれそうだ。

「ひ、いっ!痛いぃ!」
「……は、ぁっ……く、ぜんぶ、入りましたね」

ぎゅっとシーツを鷲掴むと、額から脂汗が滲み出る。体内がアーデルハイドの形に変わってしまったかのように熱く太いそれに肉が絡みついた。
痛みに耐え喉がつまり、息が出来なくなった名前にはアーデルハイドの息遣いと、粘液をはらんだ肉と肉の絡み合うぐちゃぐちゃと鳴る卑猥な音しか聞こえない。

「中、締め付けて…ぬるぬるで温かくて…擦るたびに吸い付いて、俺の精子を欲しがってるのが分かる…」

アーデルハイドのうわ言に、現実に引き戻された名前の血の気が引く。力の限りアーデルハイドの胸を押し返し、何とか挿入を止めさせようと楯つく。

「だめっ!ゴム!避妊して!」
「どうしてですか?必要ありませんよね?」
「やだ!お願い…!」
「俺の子供を妊娠してしまえば名前さんも諦めがつくでしょう?今は授かり婚というのですよね。段階を踏んでの交際ができそうにないなら、とても良い手段だと思います」
「お願い!お願いします…お願いします!妊娠したくない!私はあんたのこと好きじゃないしこれからだって!」
「あなたのお願いは何でも聞いてあげたいのですが、これだけは譲れません。名前さんのこと、大切にしますから。安心して子供を作りましょうね」
「話聞いてないの!?頭おかしいんじゃないの!?」
「ええ、そうですね」

名前の蔑んだ叫びをアーデルハイドはあっさりと肯定した。思考が一足飛びなのは、本人も認めているということだ。
身体を折って顔を近付ける。執着の目が迫る。物腰は柔らかいのに、いやに迫力がある。

「自分でも、自分がこんなに執着する人間だとは思ってもいませんでした。この歳で恋愛もしたことがなく、これからもすることなく父が選んだ会社の為になる人と結婚するものだと思っていました。でも、名前さんに会って全てが変わった。周囲の期待や批判に心がすり減っていた時、あなたが微笑んでくれた。固定概念とか体裁とか今まで大切にしていたものがどうでもよくなるくらいあなたが欲しくて。定められた道から一歩踏み出してみようと思えました」

呆然としている名前に、深いキスが与えられる。
じんわりと身体にまとわりつく恐怖。知らず知らずのうちに、蜘蛛の糸に絡め取られ捕食されるように、アーデルハイドの愛でがんじがらめになっていた。気付いた時には、もう遅すぎた。どう抗っても逃れられはしない。

「心は後々手に入れればいいだけのことです。名前さんの体さえ傍にあれば安心ですから。…好きになって貰えないなら、いっそ世界で一番嫌われたいという境地でもありますが…。どちらにせよもう逃げられないのだから、大人しく愛されて下さい」

アーデルハイドが、奥の方を深くえぐるように腰を動かす。徐々に重く濃い快感が名前に広がり、眉を寄せた。軽く握った拳を口元に当て、きつく目をつむり快感に耐える。
アーデルハイドのペニスがぐちゅぐちゅと体内を激しく擦りあげ、意識が白く弾けそうだ。名前は夢中になって抱えられた脚を折り曲げてアーデルハイドの体を引き寄せた。しなやかで温かい筋肉に包まれる。わずかに嗅ぎ取る汗の臭いが、男を感じさせた。

「……っ……、く…!名前さん、もう…!イ、きそ…です…っ…は、あ…」
「あっ、や、んんっ…だめ!やだ!」
「好き…好きです、好き好き好き好き好き好き好き」

外に出してと言おうとしたところで、アーデルハイドは噛み付くようにキスをする。長く熱い舌をぬるりと差し込まれ、濃厚に絡み合い、唾液と吐息が混ざる。
中でペニスがびくびくと暴れるのを感じた。たっぷりと精液を体内に注がれ、名前の意志とは関係なくきゅうっと締め付け、汁を一滴でも漏らすまいとするように貪欲に吸い上げる。掠れた声を上げ、腰を震わせた。

「はぁ…、あなたを犯すのは妄想でも良いと思っていましたが、一度味わうと戻れなくなりますね」

ぐったりとベッドに身を投げ出し、気を抜くと霧散していきそうな意識をかき集め、名前は恍惚としているアーデルハイドを見上げる。

「もう、帰らせて…」
「私も初めてで、あまりの気持ち良さに早く出してしまいました。今日も明日も休みですから。ちゃんと妊娠するように、今度はじっくり、もっとたくさん注ごうね」

形の良い唇が曲線を描き、アーデルハイドの顔に笑みが広がる。
一回出せば満足するだろうと思っていたのは全くの誤算だった。
アーデルハイドのペニスは精を放ったにも関わらず、まだ熱と硬さを保ったまま名前の膣壁をゆるゆると擦り続けている。
これ以上付き合いきれないと体を起こそうとするが、それを許さないアーデルハイドの手が名前の体を押さえつけた。アーデルハイドの瞳のずっと奥にちらつく炎が見える。

「愛してます。誰にも渡したくない。だから名前さんが私のことをどう思っても諦めない。あなただけを愛します。あなただけを。一生あなただけを愛します」

社長の息子は、アーデルハイドは、自信家でやり手の社長と正反対だと言っていたのは誰だっただろうか。穏やかで、誠実で、人畜無害で、謹直重厚な男だと言っていたのは誰だっただろうか。
アーデルハイドに愛されたいと願ったこともないのに、このどこまでも異常で重い愛を一身に受け止めなければならないのだろうか。

間違っていたのは今日の選択ではない。エレベーターに乗ったことでも、トイレを我慢しすぎたことでもない。それよりもずっと前に、仕事だからと言えどもアーデルハイドに関わったのが仇をなした。込み上げる悔しさに、これからどうなるのだろうという不安に、涙が溢れる。
アーデルハイドは名前の目尻から零れる涙を指で拭いながら、腰を打ち付けることに耽溺する。

「私以外の誰にもっ…見せないで…触らせないで、下さいね…」

早く帰って自分のベッドで寝て、起きたら全てを忘れていたい。そんなささやかな願いも叶わずに、名前は朝も夜も分からない中、アーデルハイドに幾度も犯され続けた。



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