忍田青年の焦燥
苛々するんです。
へらへら笑って戦場に立って、格好の獲物を見つけると一番に駆け出す。俺たちの応援を待とうともしない。その癖、俺たちの交戦中にはどこから嗅ぎ付けたのか後方支援に混ざっているんです。余程の戦闘馬鹿ですよね。
苛々するんです。
怪我をしたり、少しでも違和感を覚えたらすぐに報告しろと口うるさく言う癖に、自分は言わないんです。あんなのただの驕りです。違いますか?いつか痛い目を見ます。自分を軽視し過ぎているんですよ、あの人は。本当にそうなってからでは遅いというのに。
苛々するんです。
いつも笑ってばかりで、どの人にも良い顔をしている。八方美人と言う奴ですよね。無理に輪に入れようとしてくるところもどうにかして欲しいです。俺はそんな事望んでいないし、頼んでもいません。お節介です。俺がたまに手合わせをお願いしようとすると、用件を聞く前から「いいよ」と頷くんですけど、ああいうの、どうせ他の人にもしているんでしょうね。誠実さに欠けます。
苛々するんです。
一人になりたい時ってあるじゃないですか。そういう時に限って近くに来るんです。あの人、空気を読める読めない以前に、読まない人ですよね。構わないでくださいとはっきり伝えても、次もまた同じように来るんです。物分かりの悪い人だ。弱いところなんて誰だって見られたくないのに、自分はそんなところ見せない癖にこちらの事ばかり。本当に勝手な人です。
苛々する。本当に。苛々して、いつも目に付くんです。
どうにかなりませんか?どう思いますか?有吾さん。
「バカ。お前それは、香織が好きだって事だろう」
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