取り乱す米屋


子供を庇ったのだと聞いた。
実に彼女らしいと思った。でも、勘弁してくれと思った。

《陽介くんのお友達だと聞いているのだけれどーー》

本部近く、本部を襲った爆撃型トリオン兵、イルガーが落とした瓦礫の下敷きになったのだと、蓮さんは言った。
小さな破片だったけれど、高度が高度だった。

《頭は避けているけれど…肩から背中を抉られているわ》

「くそっ…!」
女だぞ!!
身体に傷を付けたのか。宛の無い怒りで頭が沸騰しそうだった。

本部に入るなり、医務室へと続く道を最短距離で駆け上がる。
医務室のある階、医務室の入口に続く廊下で、担架で運ばれる見慣れた制服を見つけた。
あんなに、赤い、

「香織っ!!!!」

担架に手を掛け、顔を窺う。怪我の度合いはもう、これ以上見ずとも嫌でもわかったから。
肩や背中に負担を掛けないようにうつ伏せに乗せられていて、顔にかかる髪がその表情を隠していた。顔にかかる髪を梳くように避けて、改めて顔を窺う。
とにかく顔を見たかった。早く安心させて欲しかった。

「、香織、」

目を、開けていて欲しかった。

『え?ボーダーに保護されると記憶を消されちゃうの?
え、やだ、どこまで?陽介の事、忘れちゃうの?』
『そんな不安な顔すんなって。ダイジョーブだって、』

「…大丈夫、俺が覚えてる。また、何度だってお前に声かける」
だから。

「すみません、離れて!後は任せてください」
救急隊員に引き剥がされる。両開きの扉が閉ざされる。

立っていられなくなり壁に寄りかかると、そのままずるずるとしゃがみ込んだ。
俺は、強くなりたい。









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