小説(MSSP) | ナノ






▼ MSSP 6



きっくんがえおえおの部屋から出た頃、雨粒が廊下の窓を叩き始めていた。

あろまの通った後には、痕跡が残っていた。
苛立ちのままに蹴飛ばされたらしいベンチは不自然に傾いていたり、途中自販機の横にあるゴミ箱も、ひっくり返っていたりする。
(……分かりやす。…てゆーかどんだけ?しかもこれ誰が片付けんのさ)
お怒りを当たられたその道しるべを辿りながら、きっくんも重く切ない気持ちを抱えていた。

とぼとぼと歩き続ける間、頭の中はぼんやりと靄がかかったように真っ白だった。
本当は考えなきゃいけない事がたくさんあるはずなのに、何もかもにまだ現実味が無い。
今まで数多くの逆境に立たされてきたが、そのすべてはMSSPというチームで乗り越えてきた。
誰か一人が背負う重みを、他の三人でそれとなくカバーしてきたのだ。
「……マジかー…」
『解散』という選択肢なんて、考えたこともなかった。
あろまの部屋の前まで来て、きっくんは重い溜め息を零す。
ノックをしても、返事は返ってこなかった。
きっくんはそれに何の躊躇もせず、ガチャとドアノブを回す。
案の定、ドアはすんなりと開いた。

「あろまー」
まるで子供が親に物を強請るような調子で、きっくんはあろまの部屋に入る。
ぽてぽてと歩み寄り、手身近にあった椅子を引っ張ってきて 机の前に座った。
あろまは勝手に陣取るきっくんを見向きもせず、パソコンを弄っている。
机の上にはファイルや書類が重なっているが、特に乱雑なわけではない。必要なものが揃っている印象だ。
「あろまー」
もう一度、きっくんは机の向こうのあろまに声を掛ける。
特に何を言いたいわけでもないのだが、話し相手がいないと心細くて仕方がない気分だった。

「…あろま、何してんの?」
ようやく、あろまから反応が返ってきた。
「ふざけやがってあのハゲ、今までの医療費全部ふんだくるぞクソが…!」
カチャカチャと強くキーボードを叩きながら、あろまはFBへの悪態を忘れない。

「…えおえお、本当にもうダメなん?」
ポツリと、きっくんはとても心許無い声でそう問いかけてきた。
「ええそうですよ、使えない医者しかいない支部ですからね。きっくんちょっと黙ってて」
どうせこうやって悪態をついても、きっくんは気にせず喋り倒してくるのだろう。
あろまはそれを見越した上で、少し当たりが強い返事をしていた
しかし、きっくんはあろまの思惑とは異なり、急にしょぼんと肩身を小さくして俯いてしまう。
「……そう、なんだ…」
返事の後、微かに聞こえた唸り声に、あろまは思わずPCからきっくんに目を向けた。
「…きっくん?」
机の上に置かれているきっくんの両手は、ぎゅうと力いっぱい握り締められていた。
「……〜俺、嫌だ…」
絞り出すように苦しげな声。その声色に、あろまはぎょっとしてキーボードの手を止める。
「え、ちょ、…きっくん?」
ぐぐぐと込み上げる気持ちに堪えているきっくんの姿。
「〜俺、こんなの、〜!!」
「え!?ちょ、ストップ!」
あろまは慌ててきっくんに向かって手の平を見せる。これはもしや…と悪い予感に慌ててしまう。
「きっくん待って待って!泣くなよ!?お前ここで泣くなよ!?」
焦るあろまを尻目に、きっくんの我慢は限界へと向かっていく。
胸が苦しくて、呼吸するのも辛いぐらいだ。苦しさを堪えようとぎゅっと閉じた目蓋に押し出されて、涙が頬に流れていく。
つぅと伝うその感触で、自分が泣いていると自覚した。
自覚した途端、何もかも我慢出来なくなってしまう。
押し殺そうとした感情は、ついに声になって喉を通り超えていった。

「〜〜俺、嫌だ…ッ!!」
きっくんは出来る限り声を殺して、でも心の底から叫んでいた。

「〜こんなの!絶対、俺は嫌だ…!!」
それを皮切りに、ぴぎゃー!と、それこそ幼い子供が駄々を捏ねるように、きっくんはあろまの前で泣き出す。
「はい!?」
向かいに座った図体のでかい軍人が、心の底から痛くて苦しくて辛いと、そう叫ぶように泣いている光景。
「はぁあ!?え、ちょ、きーっくん!?」
きっくんは冗談で嘘泣きをすることが多いが、本当に泣く姿なんて、あろまは今まで見たことがない。
きっときっくんはこんな姿を人に見せたくなくて、自分なりに堪えていたのだろう。
しかしこうして噴火してしまった以上、どうしたらいいのかと焦るのはあろまの方だ。

「〜おい、やめろや!勝手に人の部屋入ってきて目の前でこれみよがしに泣くとか、マジ何なのよ!?」
「ッごめ、だっで…〜!」
目の前であろまが珍しくあわあわと困っている。
こんな風に泣くなんてカッコ悪いと、自分でも情けなく思うのに、それでもどうしても嗚咽が止まらない。
「なーんできっくんが泣くのよ!泣きたいのはこっちの方だぞ!」
「〜だっで、おで、えおえおいなぎゃ、おで、いるどごないもん…ッ」
「何て?いやもうお前号泣にも程があるわ、何言ってるか全然分かんねぇーから!泣きすぎだよ!」
ずびずび、と鼻を啜ったきっくんの目と鼻頭は、真っ赤になってしまっていた。

「だっで、MSSPは、四人で続けるって、じゃなきゃ俺、絶対やだし…!こんなん、ぜってぇーやだからな…!!」
何度も何度も流れてくる涙を拭いながら、きっくんは何かに怒鳴るようにそう主張した。
えおえおの身体の事も、軍の現実も、頭では分かっている。
それでも、どうしても、『解散』なんて受け入れられないし、受け入れたくない。
どんな理屈も、この感情には通用しない。
嫌なものは嫌なんだと叫んだきっくんは、ううと愚図って俯いてしまった。
肩を震わせて泣くきっくんを見ていると、叱りつける気が失せてしまう。
あろまは 心底困った心境できっくんを見やり、ああと思い馳せる。

そんなのは、もうずっと前から分かっている。
所詮は成り行きで集まった4人。
でも、この4人だからこそ出来たことがたくさんある。

「……そんなん、俺だって分かってるわ…」
小さな、独り言のようなきっくんへの返事。
子供のように泣き喚くきっくんが、やけにムカついた。
なんだっていつもこのバカは、正しいことを平然と言ってしまうのだろうか。バカの癖に。
「あーもー!」と、あろまは自分の中で何かを吹っ切り、机をバン!と手のひらで叩いた。
そして脇に放置されているティッシュ箱を、きっくんの鼻に目掛けて投げつける。
「イデ!」
鼻に直撃を受けたきっくんは、膝に落ちたその箱を両手で持ち、でも顔を拭かずにまだぐしゃぐしゃと泣いている。
「とりあえずその汚ねぇー顔拭けやもう…!」
保育園児でも相手にしているような気分で、あろまは机に軽く身を乗り出す。
きっくんの手にある箱からティッシュを何枚も引き出し、きっくんの顔を遠慮なくゴシゴシとこすった。

されるがままのきっくんは、それでも泣き続けて、MSSPの存続を願った。




━━━━



ザーと降り出した細い雨は、寮棟を暗く覆い尽くす。
窓が風に揺れる音が、えおえおの部屋にやけに大きく聞こえていた。

あろまときっくんが出て行ってしまってから、FBはぎゅっと拳を握り締めたまま立ち尽くしていた。
ベッドに腰掛けたえおえおは、チラとその姿を見て 心苦しく目を細める。
「……FB?」
「だってあろまが…!!」
えおえおに呼び掛けられたFBは、反射的にガバと顔を上げた。
「あいつが、あんまり意地悪なこと言うからさ…!」
何を責められたわけでもないのに、FBはついそう言ってしまっていた。
言った後で、えおえおの少し苦笑った表情に気がつく。
いくらなんでもこれは言い訳がましいと自分でも後悔して、FBは小さく唇を噛んだ。

「俺があいつに頼んで、ずっと黙っててもらってたんだ…」
えおえおは、ゆっくりと静かな声に(黙っていて悪かった)と謝罪の意味を込める。
「…ちゃんと、謝れよ」
悪いのは俺のほうだから、と続けると FBは更に切なげに顔を歪めて、こちらを見つめてくる。
「……いつからだったの。俺、最近隊長調子悪いなって、思ってたけど…」
FBの問いかけに、えおえおは小さく首を横に振った。
「…結構前だな、あろまが入る前からだから。色々言われてはいたんだけど…」
「……じゃあ、あろまは…あいつは最初から知ってたんだ」
知ってたのに、教えてくれなかったんだ。
暗にそう含んだ言い方に、えおえおはまた少し苦笑う。
「まあ…そうだけど。でも、こんなに言う事聞かなくなったのは最近だな」
肩に痛み止めの注射を受けてきたのだが、かなりしつこい痺れが残っている。
思うように動かない違和感に、えおえおは肩を温めるように摩った。
「……もしかして結構痛いとか…?」
そう尋ねてくるFBの表情を見るのが、辛かった。悪いことをしたと思い知らされる。
「いや、そこまで痛くはないから」
嘘だった。本当は今もずっと、肩にナイフが刺さったような鋭利な痛みが続いている。

この目に見えないナイフは、時には眠るのも難しいほどの強さで襲ってくる事があった。
汗だくになってその痛みに耐え忍び、放心状態で朝を迎える。
そんな時に限って 翌日は鬼畜ミッション。泣き言は言っていられず、戦場では前線を駆けた。
恨むべきは自分自身の弱さだった。
上手く動かない肩に苛立って、こんなはずじゃないと自分を叱咤し酷使した。
見て見ぬ振りをして、嘘をついて、それで一体何が得られたのだろう…。
結果、今こうしてチームを解散に追いやろうとしているのは、紛れもない自分なのだ。

「…悪い、一人にしてくれ」
憔悴しきった、掠れた声。えおえおの身体と心は、悪循環で重く沈んでいく。
その空気に気がついたFBは なんとか隊長を励まそうと頭を働かせるのだが、良い案は全く思いつかない。
とにかく、「えおえおは悪くない」ということと、「今まで気がつかずにいてごめん」ということだけは伝えたかった。
「…〜隊長、あのさ、」
「悪い。頼むから」
えおえおは淡々とFBの言葉を遮った。
「あ…」
FBは言おうとした言葉を飲み込んで、一拍 愕然とした。
自分は、えおえおの為に何もすることが出来ない。
その事実に、打ちのめされていた。
「一人にしてくれ」
「……うん…分かった」
目に見えて落ち込んだ様子で、それでもFBは隊長の言葉に従う。
部屋を横切っていくFBの姿を、えおえおは視界に入れないように顔を背けた。
部屋のドアは、とても弱々しい音を鳴らして閉じられる。
一人になったえおえおは、重く深い溜息と共に身体を後ろに倒す。背中からボスンと身体はシーツに埋もれた。
「……。」
本当は、FBが何を言おうとしたのか分かっていた。
分かったからこそ、彼を遮断した。

「……最低だな」
目を閉じて、そう自分の何もかもを呪った。




背後の窓から差してくる朝もやの青白い光に、あろまはもうこんな時間かと一息入れる。
いつの間にか雨音が止んでいて、部屋にはパソコンや端末のモーター音が聞こえるだけだ。
結局、あれから一睡もしていない。
少し肌寒いが、働かせすぎて靄がかかった頭には その寒さがちょうど良く感じられた。

凝り固まった身体を解そうと、あろまは「んー」と両腕で伸びをする。
背もたれに深く身体を預けて、それとなく自身の部屋の中を見渡した。
机の前には、昨晩きっくんが勝手に置いた椅子がそのまま放置されている。
そこでわんわんと泣き散らかしたきっくんはというと、今やあろまのベッドですっかり夢の中である。
ベッドの上、こんもりと膨らんでいる毛布を見やり、あろまは溜め息を吐いた。
散々人を困らせて泣き明かし、最後には泣き疲れて眠るなんて、幼児以前に赤ん坊同然だ。
蹴り起こしてやろうかと一瞬思ったが、徹夜明けの今はそんな悪態をつくことすら億劫だ。

あろまはきっくんが眠った後、PCと端末を駆使して全国各地にある軍支部に所属する軍医を調べ始めた。
膨大な量の人事データから、えおえおの治療に適した医師を拾い上げていく。それがどれだけ途方もない作業かは覚悟の上だった。
だから、眠いと愚図るきっくんにベッドを貸したのは、あろま自身に寝るつもりがなかったからでもある。

そうして夜が明けたこの時、ついに一人の心強い人材を見つけたのだ。
「…よし、」
出来る限りかき集めたその人物の情報を整理しようと、机に書類を並べて向かう。
しかしもう、睡魔の限界だ。ふ…と遠くに飛んでいく意識に、あろまはそのままぱったりと机に突っ伏した。


ちょうどその頃、きっくんはんんと寝返りを打って目を覚ました。
一瞬どこにいるのかと思ったが、昨晩の自分の大号泣を思い出し、毛布の中で溜息を吐く。
どんな事があっても、人前では…特にこのメンバーの前では泣きたくないと思っていたのに、あっけなくその決意は崩されてしまった。
(カッコ悪いなァ、俺…)
いつ被ったのか覚えていない毛布を剥いで、身体を起こした。泣いたまま眠ったせいか、目が腫れているような気がする。
部屋に降り立ってみると、机に無造作に突っ伏してるあろまを発見した。
「あろま?」
そのあまりにも生気のない恰好に、気絶でもしているんじゃないかと、きっくんは心配そうに机に歩み寄る。
昨晩はそれなりに片付いていたはずの机の上は、履歴データ書類で散らかっていた。
伏したあろまの下敷きになっている書類の一番上に、なんだかふてぶてしい男の履歴書が目立っている。

「あろまー?」
「………んー」
きっくんの声で、あろまはうつらうつらと目を覚ました。のったりと、伏した身体が起き上がる。
「あろまもちゃんと寝たほうがいいよ」
「……うん」
だったら人のベッドで寝るなや!ぐらいのツッコミがあるかと思いきや、寝起きのあろまほっとは「うん」しか言わない。
脱力しきったあろまはきっくんの脇をフラフラと通り過ぎ、ベッドへ潜り込んでいった。
きっくんはその姿を「お疲れー」と見送って、しげしげと机の上を見る。

(……あらまぁ)
そこに並んでいるのが医者のデータであることに気づき、きっくんの口元は小さく笑う。
「あろまー」
寝ろと言ったそばから声を掛けてくるきっくんに、しかしやはりあろまは怒らなかった。
「……ん…?」
毛布の中から返ってくる寝言のような返事に、きっくんは小首を傾げる。
本当は「えおえおを治せる人、探してくれたの?」と、この書類について尋ねようと思った。
だがやはり、今は何も言わずにいようと思い直し、違う質問をベッドに向かって投げかける。

「あのさ、俺あとでFBんとこ行くけど、何か伝言ある?」
「死ね」
先ほどとは打って変わって、驚く程の反射的即答が返ってきた。
「ははっ、了解。伝えとくわ」
まだ怒ってるのか。そりゃそうだ。
『あろまだって隊長のこと治せないんだろ』
批難されるえおえおを庇うが故に出てしまったFBのあの言葉は、きっとあろまにはとても腹立たしかっただろう。
でも……これは怒っているというよりは、悔しいという感情に近いのかもしれない。

「………、」
きっくんはもう一度机の上の書類に静かに目を通す。
あまり長居をしたら、気配に敏感なあろまは盗み見ていることに気がついてしまうかもしれない。
寝呆けた鬼に怒られるのはごめんだ。特攻仕込みの攻撃を避けられるほど、まだ身体はあったまっていない。
その医者の経歴を軽く把握して、きっくんは足早に部屋を出る。忍者にでもなったような気分で、なんだか少しワクワクしてしまった。
「おやすみー」
逃げる前に小声でそう声を掛けても、あろまは深く落ちた寝息を立てるだけだった。




━━━



FB777は食堂で一人、円卓に座っていた。
えおえおの部屋から自室に帰って 数時間就寝したのだが、あまり休んだ気がしない。
テーブルの上のピザが、いつもより美味しそうに見えなかった。

「お前またピザかよー、お前のピザ好きはもう充分分かったっつーの」
「…きっくん」
向かいの椅子に相席してきた相棒を見て、FBは思わずその名前を呟いてしまう。
「うわ何?お前これ一人で食うの?無理じゃね?」
きっくんは昨日の尖った雰囲気をまるで感じさせず、いつもの調子でFBを笑った。
「…あ、うん。いつものノリで頼んじゃったんだよね。さすがに一人じゃ食いきれなかったわ」
いつもは4人で食べるから。そう言いそうになって、FBは口を紡ぐ。
今は、4人が一緒にいた事を言ってはいけないように思えた。

「…あろま、怒ってた?」
なんとなく、あの後きっくんはあろまの様子を見に行ったんじゃないかと分かっていた。
落ち込んだり 無理に一人になろうとするメンバーがいると、きっくんはいつも彼なりにケアしようとする。
一見何も考えないで騒いでいるように見えて、その実MSSPの中でも一番周囲に目を配っているのがきっくんだ。
だからきっと彼はあろまの事も見に行っていただろうし、こうして前に座っている今も、意気消沈している自分を気にかけてくれているのだろうと思う。
おそらくきっくんだって、今回の件には色々と思うところがあるはずなのに…。

「うーん、怒ってたっていうか、あれはムカついてたって感じかなー」
「何それ。同じ意味じゃないの?」
「チゲーよ。微妙にニュアンスが変わってくんだろ」
「分っかんないよ、そんな曖昧な言い方じゃ」
「いや分かるだろ!」
ケラケラと笑うきっくんに釣られて、FBも小さく苦笑う。心の底から笑うことは出来なかった。
ひ弱な笑い方をしたFBを見て、きっくんは頬杖をつく。

「あ。そういや俺、お前宛に伝言もらってきたんだわ」
「…あろまから?」
「うん。「死ね」だって」
ずいぶんと攻撃的な伝言に、FBはガックリと首を落とす。
「……ねぇ、それ別に伝えなくていい伝言じゃない?なんで人の気持ちをそんなに追い込んでくるのよアンタは」
あー…と思い悩んで頭を抱えるFBに、きっくんは「自業自得じゃ!」と返して、本題を尋ねる。

「で、えおえおは?調子どうっぽかった?」
「……分かんない…」
答えるFBの表情はとても頼りない。今度はきっくんが落胆して肩を落とす番だ。
「はあ〜?お前何してんのよ。こうゆう時はー、俺があろまで、お前がえおえおっていう分担作業だろー?」
「いつ決まったのそんな役割分担」
「今。俺が勝手に独断と偏見で決めた。」
当然のように自分を指差してみせるきっくんに、FBは目を据わらせる。
思いつきで発せられる言葉に、しかし「確かに」と納得させられてしまうのがまた悔しいところでもある。
しかし幾分、今回ばかりは自分には荷の重い役割だった。
FBは昨晩のえおえおの拒絶を思い出し、重く息を吐く。

「……一人にしてくれって言われちゃったから、あんま話出来なかったよ」

今、えおえおは一人で何を思うだろう。
(自分のせいで)と自己嫌悪にまみれて、(あの時こうしていれば)と過去を悔やんで。
どこにも光なんてないその無限ループに巻き込まれて、いつかえおえおの心は粉々に砕かれてしまうのかもしれない。

「…そっか。まぁ…一番しんどいのはアイツだもんな」
きっくんはFBに神妙に頷き返し、「でも、」と昨晩の自分の言動を思い返して苦笑う。
「とか言いながら、俺もちょっとマジギレしちゃったけど…」
「…なんで隊長、俺たちに腕のこと話さなかったんだと思う?」
「……そりゃお前…気ィ遣われたくなかったんじゃん?」
「でもきっくん『俺らに信用ないのかよ』って言ったでしょ、昨日」
「……まぁあれは言葉のあやと言うか、ね?だってムカつくじゃん。今更そんな事一人で背負い込むとか、カッコつけてんじゃねぇーよって思うじゃん」

崩れていくそれをただ傍観することしか出来ないなんて、そんなのは許せなかった。
例えどれだけ足掻いても 悲劇的な結果しかないのだとしても、その道のりを一人で歩かせるなんて絶対にしたくない。

「カッコ悪くてもいいからさ、頼ってほしかったよね、正直言うとさ」
きっくんが少しだけ寂しそうに微笑んでみせると、FBは曖昧な表情で頷いた。

えおえおの部屋から出て、締まるドアの隙間から見えたえおえおの姿を思い出す。
どんな困難にも「大丈夫だよ」と、そう言ってやれる自分でありたかった。
でも実際には自分は何も出来ず、あろまを怒らせて、えおえおを独りにして、きっくんに慰められている…。
えおえおは昨日、どうゆう想いで自分を拒絶したのだろう…。
頼ってもらいたいと思う反面で、頼ってもらえるほどの人間なのかと自分を疑ってしまう。

「……隊長居なくなったら…俺らどうなんのかね」
テーブルの上の四人分のピザを見下ろして、FBはぼそりと呟く。

「あろまはさ、アイツまだ医療班からちょくちょく声掛けられてるっぽいから、大丈夫だと思うけど…」
あろまほっとは基本忙しい人間だ。ミッションとミッションの間で メディカルルームで非常勤医をしていたりもする。
おそらくMSSPが無くなっても、彼には望まれる居場所はあるだろう。
きっくんもそれを知っていて、FBの仄暗い呟きを拾う。

「あー、俺とお前はお荷物だな!てゆーかぶっちゃけ俺のほうがマズイわ。どこにも行くあてないもん」
あっけらかんと言うきっくんに、FBは首を横に振る。
「いや、俺も変わんないよ。他の隊だと微妙に動き鈍くなったりするし。やっぱお前らが一番気楽でいいわ」
途端、きっくんが急にわざとらしく声を張り上げた。
「は!?気楽とか、お前それちょっと俺らのこと適当に見てるだろ!」
咄嗟に、FBもそれに大声で応えた。自然と姿勢を鳩胸にして きっくんに対峙する。
「ああ!適当だよ!それで上手く回ってるんだから、張り切ったり片意地張ってやることもねぇーだろ!」
「確かにな!!お前らなんかクソだわ!!」
「ああクソだ!!」
突然始まるこの意味の無いケンカ茶番は、場を盛り上げることもあれば 盛り下げることもある諸刃の剣。
きっくんとFBは、互いを見やってから「はぁ…」とうんざり項垂れる。今回の茶番は、ことのほか寒々しかった。

「……何っだ、このやり取り…」
「うん、俺もよく分からん」
悲壮感漂う話題を一掃したかったのだが、逆に虚しさが増すだけだった。
「…まぁ、今更俺らの事はどうでもいいよ。今はえおえおの腕が治るにはどうすればいいか考えないとな」
きっくんの言葉に、FBは「え?」と目を丸くする。
「MSSPを再開させるには、まず何よりもそこを突破しなきゃだろ?あとはえおえおが帰ってくるまで、俺らが踏ん張ればいいんだから」
きっくんはまだえおえおの復帰を信じているのだ。それを知り、FBは心中、愕然とする。

「……いやでも、隊長の気持ち次第って気もするけどね…」
「俺はえおえおの事信じるから。アイツも絶対、MSSP無くしたくないって思ってて、だから腕のこと黙って無理してたんじゃねぇーかなって思ってるから」
「……そうだといいんだけど…」
「俺らがそう思ってドンと構えてなきゃ、マジで消滅するぞ!!」
ドン!ときっくんは拳で強くテーブルを叩いた。
尻込みしているFBの気持ちに、喝を入れる。
「しっかりしろやFB、今は俺らが落ち込んでたって何も変わんねえーんだぞ」
昨晩泣くだけ泣いて、きっくんの気持ちは固まっていた。
どうしたって解散を認めたくないのだから、解散しないように足掻けばいいのだ。

「あろまも、なんか治せる医者探してたよ。昨日徹夜でPCと睨めっこしてた」
あろまだってきっと、昨晩吹っ切れたはずだ。
「しかもあいつ、目星つけてたっぽかった」
「……そうなんだ…」
FBはきっくんとあろまの行動力と強さを思い知り、茫然とする。
うじうじと燻っている自分を思うと、なんだか居た堪れない。

「なんかスッゴイ胡散臭そうな奴の事、調べまくってたっぽい」
「ぽいって…。あろまから聞いたわけじゃないの?」
信憑性を疑うFBに、きっくんは堂々と頷く。
「うん、あいつ寝起きだったからスキをついて盗み見てきただけ!」
「…あとで怒られても知らないよ?」
「平気平気、ちらっとしか見てないからよく分かんなかったし」
「しかも結局分かんねぇーのかよ!なんだよ、結局あろまに聞かなきゃなんないの?」
「そうだよ、あとで話聞きに行こうぜ?」
きっくんは何事も無かったようにそう誘ってくる。
さすがに、昨日の今日であろまに合わせる顔がない。

しかも何も出来ずにうじうじしていた自分と違って、あろまはMSSPの為に動き始めているのだ。
あんなにえおえおを批難したくせに、その裏では治すために尽力するなんて、卑怯だ。
そんな小粋な事を聞かされては、二の足を踏む自分がますます情けない。

「……きっくん、昨日の事はもう覚えていらっしゃらないの?」
「いらっしゃらないね。どっかのバカがどっかのバカを怒らせたことは覚えていらっしゃらないわ」
「…………。」
どっちもバカ呼ばわり。そう言われても仕方ないのかもしれない。

「謝ればいいじゃん?言いすぎました、ごめんなさいって。許してくれるかもしれないよ?」
「…ここってコンビニスイーツあるかな?」
「モノでどうにかしようとすんなや!普通に謝ればいいって」
きっくんは萎縮するFBを大笑って、にやにやとしている。

「普通に謝って、普通に許してもらえる気がしない…」
何せ相手が相手だ。自業自得なのは分かっていても、なんだか怖い。
「覚悟を決めろ、FB777!」
「覚悟って…?」
「ありとあらゆる暴言を吐かれる覚悟を!」
何故かとても楽しそうに、きっくんは親指を突き立ててきた。
「……ああ…そうね…」
言葉だけで済めばいいのだけれど。
そんな危惧をひっそりと思いながら、FBはきっくんを見やる。

「きっくん、とりあえずお願いがあるんだけどさ」
「何?」
そして、テーブルの上を指差す。
すっかり乾いてしまっているチーズとトマトが乗った、湯気の立たないマルゲリータ。
「このピザ一緒に食ってくれ。冷めててクソまずいけど」
「もー、お前マジ、だから頼みすぎなんだってー…」
にししと笑っていたきっくんは、一気にげんなりとした顔で脱力した。

「今度頼む時は、ちゃんと4人全員いる時にしろよな!」
「…うん、そうだね。そうしよう」

FBは、その言葉の重みをチクリと受け止めて、小さく笑った。


(俺も、MSSPの為に自分に出来ることを、探さなきゃ)




━━━━



その日の正午過ぎ。
あろまほっとの姿は寮の最上階、最奥に備わった大佐の駐在室にあった。

「あろまさんに会うのは久しぶりな気がするね」
大佐はその階級にはあまり似つかわしくないラフな格好で、あろまを迎え入れた。
「俺はいつもひげさんのまとめた書類読んでますけどね」
この寮に住まう隊員達を一括に束ねる上官は、人当たりの良い笑顔と寛容で臨機応変な手腕で「ひげさん」という愛称で親しまれていた。
「ひげの無いひげおやじさん」と、きっくんがよく構っている。
この間なんて食堂で鉢合わせた際に、「うわ、ひげさんTシャツパツパツ!ボンレスハムさんだ!」なんて言い出した。
階級の差を考えればそんな軽口は首が飛ばされても文句は言えないのだが、大佐もきっくんの破天荒な性格を気に入ってるようで、何故か嬉しそうに笑って応えていた。

「そうなんだ、ありがとう」
あろまの言葉に、大佐は素直に嬉しそうな笑みを見せる。
どうぞとソファーを勧められたが、あろまはそこには腰かけなかった。

「ちょっと、ひげさんにお願いがあるんですけど」
手にしていた書類を軽く掲げて見せ、真面目な話だと含める。
「はい、何でしょう?」
あろまからの少し堅い空気を察し、大佐は部屋中央の応接ソファーではなく、上官として正しい位置に座った。
部屋の奥に鎮座する、人一人を大きく包む革張りのチェアーと、威厳漂う職務机。
あろまはその前に立ち、上官に書類を差し出した。
「これ見てもらえば、話はすぐ分かってもらえると思うんですけどね」
そう告げる両目は、上官のどんな表情の機微も見逃さまいと 監視してくる。
特攻出身の軍人が本気で睨めつけてくるのだ。その目力にどことなく嫌な予感を感じながらも、上官は「何でしょうね?」と朗らかに笑って 書類を受け取る。

あろまから受け取ったその書類をペラペラと流し呼んだ上官は、しばらくして「参ったなぁ」とただただ苦笑った。


「…まぁ確かに「最終的に困ったら俺に頼っていいからね」って、おじさん言ったけどね?」

その書類は、とある医者の経歴書類だった。
何枚も連なっている紙束の一番上にあるのは、若かりし頃の彼が、ふてぶてしい表情で枠に収まっている履歴写真。
あろまはその写真を、トンと指差した。

「この『ひろゆき』って医者、捕まえてほしいんですよ」

写真には軍服姿で写っているが、今の彼は流離いの外科医だ。
どこの集団にも所属せず、その腕前と「ひろゆき」という名前だけでさすらっている男。
普通ならそれなりに順を追って残るはずの経歴が、彼の場合は軽く年単位で 何をしていたのか分からない時期があった。
謎の多いその人物の、しかし確かな手術の成功例に、あろまは目をつけた。
えおえおと同じ症状のしがない民兵を治療した話も残っていたからだ。

「よく見つけてきたねぇ」
「この履歴データ全部遡って、最近活動してた拠点しらみつぶしに当たってみましたけど、どこにも現在の情報が残ってなかったんですよ」

どこを掘り返しても、この男の『今』を掴めない。
かろうじて残っている足跡をかき集めたが、直接この男に連絡をとる術は見当たらなかった。
そう簡単に捕まらないように、ずいぶん手の込んだ情報操作と根回しをしている。
おそらく彼はとても用心深く、周到な人物だ。

「で、しょうがないんで唯一残ってた軍に在籍してた頃に絞って調べてみたら、色々と面白いことが分かって。」
どんなに優れた技術を持っていても、軍本部の情報を改ざんするのは容易ではない。
このひろゆきという人物も、さすがにそこまで手を加えることは出来なかったのだろう。
軍人だった頃の彼のデータは緻密に残されていた。

「なんとこの人、若かりしひげさんの元バディーじゃないですか」

思わぬところで出てきた上官の名前に、あろまはその瞬間(…俺の苦労は何だったのよ)と脱力した。
最初からこれが分かっていれば、わざわざ宛てのない掘り返しを繰り返す必要は無かったのだ。
しかし、これでひろゆきに接触する為の足がかりは見つかった。時間の浪費はこの際、よしとする。

あとはこの上司を、どう折るかだ。

「こんな凄い知り合いがいたなら、ひげさんなんで教えてくれなかったんですか?」
「いや本当に、よく調べてきたねぇ。まぁあの人は規律とか面倒臭いことが嫌いだったからね、すぐ辞めちゃったんだけど」
昔を思い起こしながら、上官はふふと笑う。
「こっちとしても、彼が軍に戻ってきてくれたら、もっと面白くなるんじゃないかなとは思うんだけど」
そう話しながら、渡された書類を(もう見る気がない)と示すようにデスクの脇に置いやった。
凛とした姿勢で見据えてくるあろまを、上官はにこりと軽々しく見やる。

「でもめんご。彼はなかなかの曲者でね、おじさんもどこに潜んでるのかは詳しく知らないんだ」
「でもひげさん、この前この人と落ち合って情報交換してますよね?」
あろまは間髪入れずにそう返した。
上官の穏やかな笑みが一瞬、驚きに止まった。その動揺を見逃さず、あろまはここぞとばかりに続ける。

「このひろゆきって人、今でも軍とお付き合いしてるってことですよね。ひげさん、本当は連絡つくんじゃないですか?」
これは疑問形ではない。確認だ。あろまにはその自信があった。

「…うん、あろまさんあろまさん?それ一応は機密事項だよ?どこからハッキングして見たのかなぁ?」
子供に尋ねるような柔らかい笑みと言い方だが、上官の目は穏やかではない。
その不穏な笑みに、あろまも同じぐらい不穏な笑みを返した。

「あれれ〜?おっかしいなぁ、なんで俺そんな事知ってるんだろ〜?」
「うーん、なんでかな〜?おかしいねぇ〜?」
上辺だけの笑顔が行き交う冷戦が開幕する。
「今から公安部であろまさんのPC調べたら、何かとんでもない事が分かっちゃいそうだなぁ〜」
「俺のPCなんてもうクソスペックなんで何も出てきませんよ?そもそも俺ハッキング技術とかないんで」
「じゃあなんでおじさんの秘め事知っちゃってるのかなぁ?そんな超能力ないよね?」
「あー、もしかしたら俺、第二の力を開放したのかもしれないですねー。いやぁ、さすが俺!」
疑いの眼差しを 堂々とした嘘で振り払い、あろまは 「あーあ」と くたびれた様子で軽く伸びをしてみせた。
「あと俺が知りたいのは、コイツがどこにいんのかって事だけなんだけどなぁ〜」
そうして、わざとらしい独り言を相手に聞かせる。

「どっかに情報持ってる奴いねぇーのかなぁ〜。例えばひげが生えてないひげおやじさんとかが知ってたりしないのかな〜?」
チラと上官を見るあろまの口元が、微かににやんと笑っている。
「もしかしたら、今日の夜頑張ったらその辺の事も、どうにかこうにか分かっちゃったりするかもなぁ〜。しかもどっかで間違って、知った事、漏洩しちゃうかもしれないなぁ〜」
クラッキングしていないデータエリアはまだある。そこに潜り込めれば、あるいは…。
まだ手札はあるぞと見せつけてくる小生意気な態度に、思わず上官は 敵わないと笑ってしまった。

「う〜ん。突いてくるねぇ〜、相変わらずあろま先生は」
「いや俺、昨日寝ずに本部PCにクラッキングしてたから疲れちゃって」
「クラッキング言わないの。黙っててあげるから!」
「ひげさんやっぱ良い人だわー」
ふふと満足げに笑うあろまに、「今回だけだよ」と念を押す。
「そうやって知らなくてもいい事を知りすぎるのは、良くないんだからね」
こうゆう危うい橋を渡りたがるのは、特攻の性分なのだろうか。

「俺は別に、ひろゆきって奴がどこにいるのかって事だけでいいんですよ。あとはこっちでやるんで。それぐらいならいいでしょう?」

それまで冗談を含んでいたあろまの態度は、そう言って不意に真摯になった。
そこまでに、ひろゆきの腕を欲する理由はひとつだろう。

「………。」
部下の数は腐る程いる。
その中でも、MSSPは特に自分が目をかけている部隊だ。
少数精鋭。その個々がとても扱いづらく、一筋縄じゃいかない者ばかり。
それを自らの隊に集めた部隊長の姿が、上官の脳裏をふと過る。
以前から彼が腕に抱えていた爆弾を、この上官も耳にしていた。
何度かミーティングのついでに容態を尋ねてみたが、その度にえおえおは「大丈夫ですよ」と笑っていた。

「…彼、そんなに悪化してるの?」

あろまは上官の問いかけに答えず、ただじっと見つめ返しただけだった。
その口を結んだ様子で、イエスだと充分に分かる。

「それは、…残念だね」
「こっちは残念で済ませるつもりないんですよ」
だからどうか、と深く見据えた目で情報の提示を訴える。
上官はその眼差しを受け止めて、溜め息を吐いた。

「……確かにね、連絡出来ないことはないよ」
チェアーの背もたれに深く背中を預け、渋々と語る。

「でも今も言ったけど、あの人は本当に気まぐれで、しかも厄介なんだ。自分が気に入った人間しか相手にしない。それが軍人だろうがテロリストだろうが、善も悪も彼には関係ないんだ。限りなくグレーに近いゾーンで活動してる。いつ寝返ってもおかしくない位置で、『危険人物』っていう扱いになってる」

これが、ひろゆきを表向きに出せない要因だ。
誰彼構わず助けたり見捨てたりする彼は、正義を語る軍には向かない。
しかしその腕前は確かなもので、軍としても放置はできない。
切っても切れない関係が、そこにはある。

「それに、」と上官は続けて念を押す。
「もし連絡がついても、彼が気に入らなかったらそれで終わりだよ。彼は気まぐれで頑固だから、一度断った仕事には絶対に動かない。そうなったら、今度こそMSSP隊長には軍から退いてもらうことにする。不安要素のある兵士を、いつまでも置いておいてあげれるほど、ここは甘い世界じゃないからね」

「それでもいいのか」と突きつけられた確認に、あろまは堂々と頷いた。

えおえおがギリと唇を噛んだ表情。
FB777の絶望的な悲観の眼差し。
KIKKUN-MK-Uの心痛めた泣き顔。
あろまほっとは、そのすべてを見た。

だから、出来ることは全部やる。


「他人に出来ないことを平然とやってのけるのが、俺ですよ」


全部、やってやる。




[ BACK ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -