小説(原作・パロ) | ナノ


▼ 涙

■どっぷり砂糖多めの中条さんと美柴さん。性描写注意。


涙の瞳

向き合った身体と身体。
胡坐をかく中条に跨った美柴が 頼りなく揺れていた。

「…ッ!んッ…ッはぁ……」
焦れていた身体は ビクリと背筋を反らしラストを迎える。
自分より少しあとに 中で弾ける体液に違和感を覚えながらも、緊張が解けるとくったりと脱力してしまう。
熱い額を中条の肩に乗せて、上がった息が落ち着くのを待っていた。

身体と身体を重ね合わせて、互いの呼吸を肌で感じ合わせている。

不思議と、行為の最中より この瞬間のほうが何倍も"繋がっている"と感じ 満たされる。
呼吸が静かになれば どちらからともなく額を弱くぶつけて、ほんの少しだけ 名残惜しむように深いキスを交わしていた。

「―…ッ」
「?」
長い長い情愛のキスを終えて もっと深く抱きとめようと肩を抱く。
腕の中の相手も大人しく胸に頬を落ち着けようとし、しかし急に少し目元を歪ませて 俯いた。

「ん?どうした?」
「……目に…何か入った…」
「あ、おいコラ 擦るなバカ」
俯いたまま こしこしと片瞼を擦る美柴の手を、中条が柔く引き止める。

「睫毛でも入ったか?見せてみろ」
どれ、と少し嫌がる頬を包み 瞳を覗いた。
ぱしぱしと痛そうに何度も瞬く瞼の中は 涙で濡れて 溢れそうになっている。
情事のすぐ後、あれだけ愛おしいキスの後。こんな濡れる瞳に変な事を考えないほうがどうかしてる。
そうして思わずほくそ笑む中条に、対して美柴は疑わしい視線を投げつける。

「………全く見てないな。」
「いやいや見てる見てる」
取り繕うような答えを笑って返し、再度 涙目を覗く。

「お。美柴お前もしかしてコンタクト?」
「…あぁ」
「へぇ。目が悪いとは意外だな。眼鏡かけたりすんのか?」
「………………。」
「あーあー分かった、ちゃんと診てやっから擦るなって。」
「………………。」

アンタに診る気がないからだろ、とは言わず ムスッと見返した。
コンタクトの目に異物の違和感は相当堪えるのだ。
悪い悪い と言い流して、中条は瞬く瞼を押さえ 今度は丁寧に診る。

「ん〜…ゴミが入ってるようには見えねぇけどなぁ。まだ痛いか?」
「……痛い…ごろごろする…」
「だからお前 擦るなって言ってんだろーが」

ぺシリと手を叩いて 阻止する。
叩かれたほうからは不服気な視線が返ってきた。
仕方ないとため息を吐いて、中条は美柴を覗き込む。

「もうめんどくせぇから取っちまえよ。別に帰りに困るほど見えなくなるわけじゃねぇ―だろ」
「………もう一回自分で鏡見る…」

どうやら中条の視診では信用なら無いらしい。
美柴は中条から身体を離し、鏡に手を伸ばそうとする。
しかしこの体勢では届かないと察して まだ繋がっている下肢も慎重に抜こうとした。

「ッ!」
グイと腰を強く引き寄せられた。
反動で 弱まっていた中への衝撃が甦る。一瞬 息を飲んで声を堪えたが、甘くなる表情までは抑えることは出来なかった。
にやりと満足気な中条を、渾身の思いで睨みつける。

「………あんた…最低だな」
「俺を信じないのが悪い」
「そうゆう問題じゃな、い…ッ」
反論は聞き入れられず、そのまま突き上げられれば言葉は続かない。
抵抗がないと分かると 二回戦は遠慮無く 強い衝撃で進められていく。

「…ッ…目、コンタクト…外すから」
さすがにこのままではかなり目が痛い。
快感で言葉が流されてしまう前に、喘ぎの合間を縫って そう告げた。

「もう擦るなよ。傷ついたらどうすんだ」
取り外したコンタクトは 中条の手により放棄される。
あぁ うまく保管すれば明日も少しは使えるかもしれない、という期待は完全に消え去った…。

「…あんまり外したくない」
鼻先や頬にキスを降らせる中条は 不思議そうに美柴を見下ろしている。

「………顔が、よく見えない…。」
ぼんやりとしたその輪郭に手を伸ばす。頬に触れると 少し笑んでいるのが感じられた。

「良い男はセックスしてる時も良い男だからな」
「……………。」
そんな話をしてるんじゃないのに…茶化された…。

上手く言葉が見つからず 目を閉じた。
感じるのは、首元に強く残されるくちづけと狭い壁を押し開く熱く硬い熱。
でも快楽とは別に、奇妙に胸の奥に生まれる もやもやとした感情。
こんな感情を覚えると、急に何も考えたくない衝動に駆られる。
無茶をして 自暴自棄になってしまいそうになる。

全部投げ出して 乱暴にされるように誘ってしまおうかと 自虐的な考えが頭を過った。でも、

「俺が見てるお前は変わらず綺麗だよ。目ェ瞑ってても、お前の事は分かる」

不意に囁かれた言葉はあまりにキザで、あまりに的確で、思わず笑ってしまった。
でも、その笑みは決してあざ笑うものじゃない。
そう、おそらく中条は 最初から全部お見通しなのだ。

「……見えなくても不安は無いって事か…?」
「まぁそうだな。いやでも見えた方が良いに決まってるけどな、お前のイク顔とかは特に。」
「…………変態。」

身体と身体を重ね合わせて、互いの呼吸を肌で感じ合わせている。
この瞬間、"繋がっている"と感じ どんな感情より 満たされる。


■二人出逢った喜びを歌うように 逢う度、光と影はそっと 混ざり合えるよ (Layra 清春)
08.6/23



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