小説(原作・パロ) | ナノ


▼ くだらない遊び

■日記ログ。意固地な鴇くんとニヨニヨな中条さん。



くだらない遊び


「先生ッ!」

そこは、中条宅から一番近いコンビニ。
レジで会計する中条をぼーっと待っていた美柴は、その言葉と光景に 我に返った。

「おー。何やってんだお前」
「お遣いだよー。牛乳買いに来たー」
「へぇ。背ぇ伸びないからか?」
「な!違うよッ!!今日は俺んち、シチューなの!!」

中条の腰ほどしかない小学生が、あろうことか、あの、中条伸人を「先生」呼びである。
しかも 当の本人も至って普通に受け答えしている。しかも、笑顔まで見せて。

「先生は?」
「ん?俺はアレだ、大人のお買い物ってやつだ」
「先生のエッチー!」
「声がデカイよお前…」

まさかこうゆう冗談が そんな大声で子供に喜ばれるとは思わなかったらしい。
後悔する中条を 悪戯っ子めいた笑顔で笑う少年は、バイバイと手を振る。中条も軽く手を上げて応えると、こちらに戻ってきた。

「ったく、最近のガキは侮れねぇな」
「あんたの方がよっぽど侮れない」
「……は?」

中条宅までの帰路を歩みつつ、美柴は若干 中条と間を開ける。
その距離に 中条が訝しがったのは ほんの一瞬。すぐに意味を悟る。

「バカかお前。いくらなんでもあんなガキに手ぇ出すか。将棋教室の生徒だよ、向こうも「先生」って呼んでただろーが」
「………?」
「昔俺が行ってた将棋教室があんだよ。たまに講師みてぇーな感じであーゆう子供の相手してんの。たいした事ねぇーけど 一応金貰えるしな」

初耳。
こうゆう関係だからだろうか、そんな身の上話を聞かされると どうにも落ち着かない。
美柴にしてみれば、第一この男が「先生」と呼ばれている事実さえ信じがたい。

「……似合わない」
「そうか?なんなら お前にも最中に「先生」って呼ばせてやろうか?」

それは絶対に、死んでもごめんだ。
これ以上何か言い返せば 上手く流されてそうゆう展開に持っていかれてしまうだろう。
前言撤回させようと、完全無視に決めた。



都合が悪くなると口を閉ざすのが、美柴鴇という奴だ。
帰路、横目に見ても 表情を変えない美柴を 中条は微か笑う。
それは いつもの 心此処にあらず な無口無表情とは違う。
こちらを意識して無視をして こちらを意識して見ない。
まったく、なんとも可愛い抵抗だ。

しかしこうゆう時は笑っているのがバレると 余計お怒りを買うのだ。
タバコを咥えて誤魔化し、いつになったら口を割るだろうかと わざと何も仕掛けず待ってみる。

「……………。」
「……………。」
お互いを意識して、それでも意地になって続ける無言の時間。


(くだらない意地の張り合いだ)

そんな事は、ずいぶん前から気づいている。


(バカみたいだな)

しかし困ったことに 案外楽しんでいるのだ。お互いに。



■何かあると黙っちゃう美柴さんと、上手く流してあげてる中条さんが大好きです。




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