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▼ 声が聞こえる

■狂気的なお揃い思考。性描写注意



閉めきったカーテン。
その隙間からまだ明るい午後の光が入り込んで鴇の部屋を淡く明るくしている。
ベッドから布団が床に無造作に落ちていて その上に学生服が二組脱ぎ捨てられていた。

お揃いのモノトーンチェックのベルト。

スプリングを鳴らす身体と身体。
鷸は腕で身体を支えて 組み敷いた鴇を見下ろした。
まだ潤みきらない表情と交錯する視線。
首筋から胸近くまでキスを降らせば紅く肌に残っていく烙印。それを指でなぞると くすぐったいのか むずがる鴇に 鷸は深いくちづけをする。
しだいに息苦しさに切れ切れになっていく互いの吐息。鷸が微かに爪を立てて鴇の肌を撫で下ろしていく。
ぞくぞくする愛撫。身体の奥から沸き上がる欲求に鴇はあがらい切れなかった。

鷸は鴇の手をとって 人差し指に微かに舌を這わせた。
手の甲 手首 肘の窪み 鎖骨 徐々にのぼってくるやわらかな舌先。
身体の熱が上がっていくのを感じる。吐息の合間にたまに漏れてしまう自分の潤んだ声。
いつもなら触れられたぐらいでは何も感じない部分。それがどうして こんなただ舌でなぞられるだけで うねるような快感になるのだろう。

核心に触れることはせず 鷸は鴇の中を指で押し広げていく。
見れば鴇は眉を寄せて 小首を傾げるようにして 異質感に耐えている。
焦らすように指をゆっくりと沈め内側を擦る。

噛み締めている唇から なんとかして声を上げさせたかった。羞恥心を煽って傷つけたかった。

沈める指を増やしていく。急がずゆっくりと。鴇の身体が焦れる時間を楽しむように。
空いている方の手で 鴇の目元にかかる髪を払いのけた。
その目蓋にキスをしてから 沈めた指を一本ずつゆっくりと折っていくと 微かに声が漏れはじめた。

まだ足りない。次はその睫毛を涙で湿らせたい。

髪に絡ませていた手を降ろし 鴇の核心に触れる。
熱を帯び腫れているそれを手の平で包むと 鴇はその手を払い除けようとした。
今以上の快感に怯えて 駄目だと懇願している濡れた瞳。
許してはあげない。
包んだ手を上下させ擦り上げる。潜る指は広げるように円を描く動きを繰り返す。
鴇は逃れようと身を捩った。鷸の肩を押して引き離そうとする。
しかし どうあがいても声が漏れてしまう。

鴇の涙が見たい。

回転する指を出来るだけ奥まで沈める。内側を少し荒く抉った。同時に上下していた手で先端だけを強く握り擦った。
刹那 それまでとは違う悲鳴が上がった。
鷸は鴇の表情を見逃さない。
駆け上がってくるしびれに震え 硬く閉ざした目蓋と 薄く睫毛に滲んだ涙。
軽く浮く腰。仰け反る喉。緊張する身体。指への締め付けが強くなる。手の平に生温かい体液が溢れ出すのを感じた。


絶頂に耐えきると 鴇は止まっていた呼吸を取り戻すように荒い息をする。

「……鴇…?」

名前を呼べば 素直にこちらを見上げてくる。
軽く微笑んで手に絡み付いた白濁の体液を 見せつけるように舌で掬い舐めた。
見たくないと ばっと目を逸らした鴇を押さえて くちづけをする。
体液の絡んだ手で鴇の手を捕まえる。
握れば ぬめる体液は肌と肌の間で音を鳴らし広がった。

「…まだだよ…?」

そう囁いて鷸は次は自分自身を鴇の中に沈める。果てたばかりで少し狭いそこを 慎重に押し進める。
最後まで潜って また慎重に引き抜いていく。ギリギリまで戻して 悶える鴇を無視して今度は一気に打ちつけた。
いきなりの深い潜入感に鴇が跳ね上がる。くぐもった悲鳴をあげて 鷸の手を強く握り返してきた。

何度も 何度も 深く腰をあわせる。
唇を舌で開かせて 絡ませ合う。動きが大きくなる程に キスは続かなくなり 互いの潤んだ声が聞こえる。

「ねぇ…気持ちいい?」

揺れながら優越感にも似た声で問う鷸に 鴇は何度も声にならない吐息と共に頷いてしまう。
また身体を支配していく絶頂。二度目は一度目とは比べものにならない 息ができない程のしびれ。
同時に鷸が脈打ち 体液が中を満たすのを感じる。
名前を呼ばれた気がした。
でも 鴇には応える余裕はなかった。どこか遠くへ引きずり込まれそうな黒い快感の波に喘いでいた。


注ぎ込んで力尽きた鷸は ゆっくりと鴇の上に崩れ落ちた。
自分と同じシャンプーの香りが甘い。
ふと 鴇の耳が目に入った。
唇を寄せて 少し強くその耳たぶに噛みついた。
突然の痛みに驚いて視線を向けた鴇に 鷸は荒い息を落ち着かせてから 無邪気に笑った。

「ピアス開けようよ お揃で」

そんな提案をする鷸に 鴇は一瞬戸惑いを感じる。
この爛れる感情が愛しいというものなら 鷸には同じ感情はあるのだろうか。
……不安?違う これは恐怖だ。
間違っている自分達を少しも疑わない鷸が 恐い。
そしてそれ以上に…溺れてる。

「……またお揃…」
「何 イヤなの?」

不満げにむくれる鷸に 鴇は少し呆れたように笑ってみせた。

「…いや…構わない」

繋いだ手と手は 今も体液を絡ませていた…



06.3/7





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