SS | ナノ


▼ 1日1ロール

■頂上戦争直後。喪失感に囚われるルフィと、それを見守ることしか出来ないロー。


吐精の後、言い様の無い胸の重みを抱えながら溜息を吐き出した。
無理に貫かれて気絶しそうな相手を見下ろす。包帯で巻かれた胸がぜいはあと上下していた。
絡みつく音で孔から抜き取られた性器に身震いをして、ルフィはゆるゆると頼りない力でローの手を手繰り寄せる。言葉は無く、ただ甘えるように死を主張する指先に頬を寄せてきた。

「・・・エースが悪い夢を見た日はすぐに分かった」
掠れた声。ぽつりと零れた唐突な話題に、彼の様子を窺った。
生気のない白い顔がぼんやりと天井を眺めている。
『エース』
身体にも心にも瀕死の重傷を負った彼は、朦朧とした意識の中で悲痛な涙とともにその名を呼ぶ。
もがき苦しむその身体を堕とし沈めるように、ローは何度も何度も手荒に抱いた。
忘れてしまえとは言わない。ただ今はそうして無理にでも意識をそこから遠ざけてやりたかった。

「・・・何回聞いてもそれがどんな夢なのか、教えてくれなかった」
彼がどうしてそんな話を始めたのかは 分からない。
きっと彼自身もはっきりとした意識はないのだろう。
おぼろげに思い出される光景を口から零している、そんな危うい印象を受けた。
「今ならどんな夢だったのか、分かる気がする…」
ルフィはゆっくりと片腕を闇に差し出すように引き上げる。
手の平がまるで何かを優しく掴んでいるような仕草を見せた。
繋いでいた”誰か”の手が するりと力を失って 彼の手の中をすり抜けようとする。
落とさないように、離さないように、彼の手は必死に掴みなおそうとした。
それでも、きっと手は離れてしまったのだろう。
「きっと独りぼっちになる夢だったんだ」
ルフィの手は何も無い空間で、自分の無力さに絶望していた。

「もうおれは誰の弟でもないんだな・・・」
兄のいる海であればどんな逆境だって、哀しくなんてなかったのだろう。
「…本当に、独りぼっちだ」
夢の中に居るかのような、茫然とした瞳を閉じて、呟いた言葉。
落ちた瞼に行き場を奪われ、頬に零れ落ちる涙。

人の想いというものは、どれだけ時間が経っても消えずに募っていくものだ。
金や名声をどれだけ手に入れても、こうゆう後悔は決して薄れたりしない。
自分のせいでとそう嘆く心の軋みを、ローはよく知っていた。
たとえ今が情事の後のベッドの上であっても、「俺がここにいるだろう」だなんて陳腐な言葉も言うことは出来ない。
孤独を恐れてしんしんと目尻に流れる涙を唇で拭いながら、もうこのまま時間が止まればいいと思った。
どうかこれ以上その想いを募らせるなと。
届かない手に傷つかないで欲しいと、そう願った。


■時折想うのは、届かなかった愛について。(輪廻,清春)



[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -