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あぁ これを幸せと呼ぶのだろうか。
柄にもなくそんなことを実感していた。
夜のしんみりとした静けさ。ベッドの上。
ずっとこのままでいたい。
ローは閉じていた目をそっと開けてみると、感触と違わず腕の中でルフィが眠っている。
微かにローの脇の辺りのシャツを握り締めて擦り添ってくるようにして、あの真っ直ぐな黒の瞳は閉じている。
(・・・さすがに寝てるときは大人しいんだな)
ふと口元が緩んでしまう。
自分の隣で誰かが眠っている。ただそれだけのことなのにどうしてこんなにも心が締め付けられるのだろう。しかもその締め付けられる感覚が心地よすぎてたまらない。

たまらなくなって、空いている手でその頬に触れた。額にキスをしてみる。
実はもう何度となくこんな愛情表現をしている。眠っている相手は知らないことだ。でもそれでいい。
陽射しの下、この死を謳う手を取って「トラ男!」と見上げてくる花火のような笑顔に、いつだって救われている。
このモンスターが起きている間は振り回されてばかりいるから、眠っている間だけでもひっそりと充分な愛を注いでいたいのだ。
愛したい。そんな気持ちを抱くことが これ程にまで幸せなのだということを 教えてくれたのは、紛れも無く。
(…麦わら屋)
まるで初恋のように純粋な想いを募らせる自分を呆れ笑って、もう一度目を閉じた。
目の前が闇に覆われても、腕にある重みも、じんわりとした子供体温も、たまに肌にかかる寝息も、消えたりはしない。

「・・・おやすみ」
ローは心地良い眠気に吸い込まれながら、ルフィを確かめるようにそっと抱き寄せた。

さぁ。君と迎える明日、どんな冒険を始めようか。




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