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▼ 道が分かれているなんて、知らなかったんだ

■小学生美柴双子。もう二度と戻れない道。



2

学校から家までの帰路は、二種類あった。
親から教わった 普通の公道を歩いていく道。
少しずつ寄り道を覚えて見つけた 探検できる道。

どちらの道も 二人で歩いてきた。

帰り道でのケンカ……というかシギの勝手なわがままのせいで、ムキになった自分達は どっちが謝るかで賭けをした。

「こっちの道と、あっちの道。どっちの道が早く着くか競争だからね!」
「負けたほうが謝る」
「そう!……いいよ、トキに選ばせてあげる」

ふんっと偉そうにそう言ってくる。
考えた。走ればきっと同じぐらいの時間で着ける。走るなら 公道のほうが走りやすい。何より、あの隠れ道でシギが一度も足を止めずに この賭けに集中出来るわけがない。

「………こっち。」
「じゃあ 僕がこっちね」

「位置について!ヨーイ…」

「「ドン!」」



――――…………



あの時は 道が違っても、帰る場所は一緒だった。
それがどうしてこうなってしまったんだろう。
今はもう この道を息を切らせて走っても、お前と会う事はない。
折り重なるように続いていた道だった。でも何処かで、片方の道だけが曲がっていってしまった。
……もしかしたら、曲がってしまったのは俺の道なのかもしれない。

曲がった事にも気づかずに、振り返った時にはもう遅かった。

離れていくこの背に、シギはきっと叫んでいただろう。手を伸ばしていただろう。
気づかなかった……もう、この道にお前は居ないし この先もずっと居ないんだ。

ここから、シギは見えない。居ない。感じない。聞こえない。

「…………………」

分かっているのに、心の何処かで 探している。
分かっているのに、この角を曲がれば…なんて期待を捨てきれずにいる。

シギ、俺は今度は何処に歩いていけばいいんだ…。



━━━━

「ただいま―!!」
息を切らせて玄関を開け放すと、まだトキは到着していなかった。

「やった…!!」
思わずガッツポーズしてしまう。
何となくトキがあっちの道を選ぶ事は予想がついていた。だからトキがどっちにするか迷ってる間に、どう走るか決めていた。
一度小さな崖に落ちかけてから 怖くて絶対に行かなくなった道が途中にあった。あそこを行けば断然有利なんだ。

あの時より大きくなったから、足を滑らせるなんて馬鹿なことしない。思いっきり走り抜けてきた。

トキの足音が聞こえてきた。きっと同じようにこのドアを開け放すんだ。
先に座って 頬杖をついた僕を見たら、一体どんな顔をするんだろう。

「ただい……」
「はい、トキの負け!」

トキを指をさして言った。負けるなんて予想していなかったんだろう 固まっていたトキは小さく息をついて 僕を睨んだ。

「……悪かった」
「うむ、分かればよろしい」

納得いかないと目をそらすトキに、笑った。

「おかえり、トキ」



―――――………



どの道を走っても、帰る場所は同じだった。
待っていれば 必ずトキが此処まで来てくれた。
どうしてこんなことになってしまったの。

離れていくトキに 必死に叫んでいた。

「嫌だよ鴇。 一人にしないで。置いていかないで 助けてよ鴇。」

何度も何度も何度も何度も、叫んだよ。
気づいてくれなかった……此処で待っていても もうトキは帰ってこないし 何処にいるかも分からない。

ここから、トキは見えない。居ない。感じない。聞こえない。


ねぇトキ、俺は今度は何処でトキを待てばいいの。



07.5/6





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