小説 | ナノ


▼ PINK CALL END



「はぁ…はぁ…はぁ…」

ばったりとベッドに倒れて、上がった息を落ち着かせる。

今頃になって汗が噴出してくる。
まるで全力疾走したあとのようだ。
ビズの終了後でも、こんなに息を切らせることはない。

「…はぁ…っあ、」
妙な、達成感だ。
自慰でこんなにもすっきりとした心地になれるのかと頭が茫然とする。

「おい」
イッた瞬間に肩から落ちて、それからシーツに放置していた携帯。
何度も呼びかけてくる中条の声が聞こえた。
もそりと重い腕を伸ばして、「ん」と電話に出る。

「良いイキ声だったな?」
「………………」
楽しげな声に羞恥ののち物凄く苛ついた。
「つかお前なに一人で満足してんだよ、次はお前が」
「寝る。」

ぽちり。
電源を切った。
切る寸で「はぁ!?」と怒っている声も聞こえたが、無視した。
現実に戻って、我に返った今、「同じことをしてみろ」と言われて出来るわけがない。
中条は電話口でよくもあんな風に色の濃い言葉を囁ける。いっそ感心してしまう。
………それに従順していた自分も 馬鹿みたいだ。でも……良かった。

「…………」
そうして、静かになった携帯を少し見つめる。
………やっぱりちょっとぐらいは付き合ったほうが良かっただろうか。
けれど今それを許したら、あの男は絶対につけ込んで来るに決まってる。
いつもあんなに好き勝手してるんだ、たまには一人で寂しい思いでもすればいい。

そんな強気な自分に、内心おかしくて笑ってしまう。
電話が来る前の絶望感が嘘のようだ。
「…………はぁ…」
深く吸い込んだ呼吸を 時間をかけて吐き出す。
今日はきっと自己嫌悪や虚しさでやり切れず、何度も何度も目を覚ましながら朝を迎える。さっきまではそう思っていた。
でも、今、至極心地のよい眠気に包み込まれている。

「……………………」
枕横に横たわる自分の右手を、ほんの少し握ってみる。
中条が超能力者ならば、もしかするとこうして、見えない誰かの手を握ろうとしている事にも気がつくかも知れない。なんて馬鹿な想像をする。

下の名前は、反則。

(………−−。)

仕返しに、男の名前を微か心の中で呟いて ゆっくりと瞼を閉じた。



そうして、煙草くさい大きな手が、暖かくこの手を握り返す夢を見た。



■ちょっとくらっとしそうになる終末感を楽しんで (ワールズエンドダンスホール/初音ミク)




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