小説 | ナノ


▼ 落書き

■海賊ネタ


青い海。小波に揺れる沖合いに、今、二隻の海賊船が対峙していた。

積年の荒波を掻き分けてきた伝説の海賊船、ブラックパール号。
そしてその威圧感溢れるパール号に向かっているのは、まだ名の知れない中型海賊船。

「……ようやく追いついた…!」
まだ若い駆け出しの海賊が ぎゅっと拳を握り、船首に立つ。
薄茶色の髪を海風に晒し 紅茶色の瞳で目前の海賊船をキリリと睨んだ。
「ブラックパール…!」
「優希、油断するなよ」
恨み声で意気勇む優希を、半歩後ろで控えるアキラがそう宥める。
しかしその手は すでに腰にある剣に忍ばされていた。


カツン…カツン…


ブラックパール号の甲板を、黒い革ブーツが音を鳴らしゆっくりと進む。
悠然と 優希に対峙するように船首に姿を現したのは 悪名高き大海賊。

「……お前らも、懲りねぇーなぁ」

気だるげに 煙草の煙を吐き出し、波風に黒いターバンとロングジャケットを靡かせる姿。
目にかかる前髪の隙間から覗く、鋭く、それでいてどこか楽しげな視線で向かって来た海賊船を見下ろす。
それは紛れも無く、先日優希達の船の船長を攫って行った ブラックパールの船長 中条伸人だった。

現れただけで周囲を圧倒する存在感。
アキラはその空気に 密かに息を呑む。 
しかし優希は頑として立ち向かった。

「何度だって向かってやる!船長を返せ!海賊め!!」
「はっ お前だって海賊じゃねぇーか。海賊が海賊からモノを奪うのは至極普通のことだと思うけどな?」
「奪っていいものと悪いものがある!船長は無事なんだろうな!?」
「さぁ…それはどうだろうな…?」

中条はにやりと含みのある笑みで 後方の中央マストをちらりと見やる。

ブラックパールのマストに、枷を付けられ拘束されている人物。
はぁはぁと息を上げ ぐったりと頭を垂れているその人が、優希達の船長 美柴鴇である。
マストアイテムの海賊ハットは甲板に転がり落ち、首もとのスカーフは解け ボロボロとなっていた。

「鴇っ!」
弱っている船長の姿に気がつき、優希は船首から身を乗り出す。
「っ優希危ねぇって…!」
慌ててアキラが優希を押さえる。
しかし船長を誰よりも慕っている優希は 自分の事などお構いなしに叫ぶ。

「〜鴇…!鴇!聞こえる!?」
「………ッ…優、希…アキ、ラ、逃げ…ろッ!」
「っ鴇!」
「船長っ!」

息も絶え絶えで微かな船長の言葉に 二人は血相を変える。

「なんだ。まだ抵抗する余力があったのか?」
カツンとブーツを鳴らし、中条がマストに向かう。
面白そうに 美柴の顔を覗き込む。
「っ!」
視線を合わせまいとする美柴の顎を捉えて、ぐいと面を上げさせると 低い声で笑った。

「…ッ放せ…!」
「おーおーそんな態度取りやがって。また酷いお仕置き、されたいのか?」
「っ…!」

何やらやり取りしているブラックパール号に向かって、負けじと優希が声を上げる。
「〜お前っ 鴇に何をした…!?」
「あ?そりゃもちろんナニだろ?」
「…なっ!!」
「いやアンタ絶対そう言うと思ったけどな…!!」
さらりと行為を肯定する中条に アキラは(やはりか!)とツッコむ。

そしてその横で、ビシッ!と中条に指を突きつけ 優希は叫ぶ。

「鴇の全部は、僕のものだ!!」
「はい!?」
「中条伸人!お前に鴇の心は渡さない!返してもらうぞ!」
「え、いつからそうゆう設定なの!?」
思わずのアキラのツッコミを聞き流し、優希はシャン!と剣を抜く。

「お前なんかじゃあ俺には敵わないってこと、もっとちゃんと教えてやらなきゃなんねぇーらしいな?」
それに応え、中条はにやり笑う。煙草を踏み潰し、同じように剣を抜いた。

互いの船首で、憤りで強く睨みつける視線と 余裕綽々と悪どい笑みをみせる視線が 火花を散らし交差する。

「僕はお前を倒して、鴇を手に入れる!!そしてこの海の海賊王になるんだ!!」
「海賊王!?どっからそんな話題になった!?」
「はっ!やってみろ!!俺を超えてみせろ優希!!」
「何その師匠みたいな台詞…!?」

アキラを無視し、優希はヒラリとブラックパールの甲板に飛び移る。


「鴇!今助ける!!」
「一人で行くなよ優希!?俺も連れてけ!?」
「ははっ 残念だったなぁ…この男はもう俺無しじゃ生きられない体なんだよ。諦めるんだな!」
「もうそれ海賊っていうかただの不倫相手じゃね!?」
「…アッ、くっ……優希…ッ」
「ってアンタも乗る気かこの設定に…!?」

急激に怒涛の展開をしていくストーリーに、アキラの怒号が響く。


「〜いい加減 もとの話に戻れよ!てか俺の要る意味ねぇー!!」


ー…………


「ー…っハ!!!」
「っ!?」

バチ!と勢い良く目を覚ましたアキラに、覗き込んでいた優希がビクリと驚いた。

「〜〜っ!夢か…!なんつー夢だよ…!?」
(…ア、アキラ大丈夫?うなされてたけど…)

心配そうに覗き込んでくる優希を見上げ、アキラは心底ほっとした息を吐き 真摯に優希を見つめた。

「………俺、鴇さんの船には乗らない。あと、優希は今のままで居てほしい。」
(……………何の話ですか。)



■落書きだから、なんでも有りなんだぜ!(きらりん)





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