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▼ 疲れ目に。

■まだ(ヤる事ヤってますが←)曖昧な時期の中鴇。(10.10/17日記ログ)



今日 満楼軒での打ち合わせの最中、美柴はよく目を擦っていた。

向かいに座っていた中条には その仕草が目について、最初は(また寝不足か)と放っていた。
しかし美柴は ぎゅっと強い瞬きも意識的に何回も繰り返し 違和感を拭おうとしているようだった。
ゴミでも入ったか。
傍目から見れば 涙目ではないし充血もしていない。何しろ本人が何も言わずにいるのだから、あえて話の骨を折ってまで「どうした」と聞くのもどうだろう。
そう思案した中条は、美柴のいつもの睡眠不足ではない行動に気がついたものの、わざわざ指摘はしなかった。




解散後、中条は気まぐれに美柴を家に誘い、美柴は気まぐれに誘いに乗った。
そして美柴は 中条宅で自分が座るスペースを確保する。
床に散らばる要るか要らないか分からないプリントや冊子、それらをトントンとテーブルで整えて、はぁと短い一息。
今度は天板の見えないテーブルの上を整理し始める。
完全に無意識に進んでいく美柴の整理整頓を見守りつつ、中条はコーヒーを沸かしていた。

「あ。おい、その下に…」
「!」
退かされた雑誌の下からコンドームが発掘され、美柴の手が急停止。
予想通りの反応に「この間の残りだ」と言わなくてもいい情報を にやり笑って告げる。
ギラリと中条を一瞥した美柴は 諦めてまた短い溜息を吐いた。
ピンクの小包装されたそれに苦々しく目を落とす。

「……普通隠すものだろ」
「どうせすぐ使うんだからいいじゃねーか」
「……………………。」
「それにお前、挿入る直前にゴム探して もたつくなんてシラケるぞ?だから目につく所に保管してんだよ」
「…………これは保管とは言わない。」

不服気に反論する美柴が、また目を軽く擦った。
いよいよ、中条の気に止まる。

「……つかお前今日ずっと目ェ気にしてんな。乾いたか?」
美柴がコンタクトだと知っている中条は、さりげなくエアコンの送風向きを変え、ベッドに座った。
横で床に座る美柴を見下ろす。
ちらりと中条を見上げた美柴の目はやはり充血などはしていない。

「……違う。ずっとミシンしてたら、目の奥が重い」
そう訴え 目頭を押さえるが、あまり効果は無いようで 息をついた。
へぇと頷く中条は そんな美柴の頭に手を添える。そっと上向くように促した。

「……………何。」
「何もしねぇーよ。いいから、ベッドに頭置け」
自分が触れると途端に疑い深くなる美柴の視線を、つい笑ってしまう。
美柴の疑念は笑われたことで更に増したが、それでも大人しく頭を倒し 中条を逆さに見上げた。

「………何するんだ」
「何でもねぇーよ、目ぇ閉じてろ」
「…………………」
少しだけドキリと妙な予感に美柴が戸惑う。
けれど中条はもう一度「目を閉じろ」と小さく窘め、片手の平で美柴の瞼を柔く覆った。
思わず言われた通り 目を閉じてしまう。

「…………………。」

それは、他意のない 温かい手だった。
ようやく疑念を払拭した美柴は、受け入れて 深く息をした。

じんわりと中条の体温が瞼を包む。

「疲れ目はな、適度に温めんのが良いんだよ」

胸の奥を震わせるような、低く落ち着いた中条の声。
柔い暗闇の中で、それだけが聞こえる。


「…………………。」

たった数分で、美柴はその温かさにまどろんでしまった。
人の体温が心地良い。
指先から微かに漂う煙草の匂いさえ、眠気を誘った。

「……………。」
中条は、少しずつ美柴の肩の力が抜けていくのを 感じ ふと笑った。
……たまに こうして互いの間に奇妙な心地良さを感じるのは、何なんだろうか…。
きっと、美柴も心のどこかでそう思っているはずだ。
互いに、口には出さないけれど。

「……………」
今、手を離したら、美柴は一体どんな顔をするだろう。
「………………………」
このまま本当に寝入ってしまいそうな美柴を、中条が許すわけもない。

ゆっくりと覆い被さって、触れるだけのキスを落とした。

「……………」
「……………」

瞼に重ねていた手を退かすと、美柴はパチリと目を開ける。
その強い目力の無表情は、緊張の表れだ。
まだこうゆう不意打ちに慣れない美柴の様子が可笑しくて、中条はにやり笑った。

「……………やると思った」
「だったらちゃんと警戒しとけよ」
そう言って、今度は倒れたままの額にくちづける。
「!」
反論しようとしたのもつかの間、瞼を包んでいたはずの優しい手は もう今やジーンズのファスナーに伸びていた。
咄嗟に起きようとする上体はキスで抑えられてしまう。
自分のではない手が、勃ち上がりそうな軸を布地越しに 柔らかく沿うのがもどかしい。

「…ッ…な、ッ…〜」
中途半端な快感が押し寄せる。
美柴は唇を噛んで堪えるが、それを中条は横から攫ってベッドに抱え上げた。

「もう目は気になんねぇーだろ?」

確かに、悔しいことに目の奥の重みは消えていた。
少しでも喘がまいと口を割らない美柴を見下ろして、中条はわざとらしく ゆっくり下肢に触れた。

「……今度は、こっちだよな…?」

悪戯な囁きに陥落し、美柴は腕で顔を隠す。

テーブルの上のコンドームが、足りるかどうかは 中条次第だ。



■意地悪なヤブ医者降臨!


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