小説 | ナノ


▼ 黙示録

■時系列は定まっておりません;; 女性への下衆暴力注意



不意打ちで襲いかかってきたのは奴らではなく、まだ生きている人間だった。
人数は10人。全員が男。そのどれもが、手に銃火器を装備していた。

優希達は全員後ろ手に拘束され、一列に並ばされた。
いくつもの銃が狙いを定めている状況では、反撃に出ることは出来ない。
子供達は最初こそ暴れてはいたが こうして拘束されてしまうと、大人しくせざるを得なかった。

「なんだコイツら、全然ハズレじゃねぇーか」
車や荷物を漁っていた男が そう嘆く。
慣れた手筈だ。この男達はこうやって生存者から食いつないできたのだろう。
横に並ばされた子供達を見てから、中条と美柴はチラと視線を交わす。
(このまま諦めて帰れ)と、二人は内心で願う。

しかし、それはやはり叶わない。

大した収穫がないと分かると、男達は ズラリと奈緒と静香を取り囲んだ。
一人がその背後に回り、拘束していた縄をナイフで切った。
そうして、奈緒と静香は銃口に急かされるように立ち上がる。
「こっちはまだバージンかなぁ?」
銃身が奈緒の身体のラインを弱く撫でた。
その下劣な声で、何が目的かは一目瞭然だった。

「っ!てめぇーら!!」
瞬間、カッと身体中の血を滾らせたアキラが身を起こす。
しかしすぐにその顔を 銃身で殴り飛ばされる。
「っ…!!」
その男を 今度は横から優希が蹴り飛ばす。
しかし手が縛られたままでは思うように動けない。
別の男達に後ろから襲われてしまう。
優希とアキラは力任せに地面に頭を打ちつけられ、押さえ込まれた。
ガチャリと、銃がその頭に押し付けられる。
「ガキは黙ってろや」
「撃っちまうぞ?」
「!?」
「待て!」
中条と美柴がハッと何かを言う前に、

「そのガキに欲情してるアンタ達は猿以下だね」
動かずに黙っていた雅紀が 冷えきった声でそう吐き捨てた。
黙れと同じように殴られる。
子供達は一斉に 乱暴に地面に打ち付けられていた。
しかし三人の少年は 男たちを強く睨む目を反らさなかった。

「…このガキ共、何だその目」
その視線が癪に触った男が さらに痛めつけようとするが、他の男たちが笑ってそれを制した。

「放っておけよ。今はこっちだろ?」
ニヤついた男に覗き込まれ、奈緒は震え上がって ぎゅっと強く目を閉じる。
そしてグリグリと銃口が奈緒の身体を撫で下ろす。
その銃身を、静香が手で強く叩き落とした。

「やめな。カッコ悪い」
凜とした、強く響く声。
そうして ゆっくりと前に進み出て、背中に奈緒を隠した。

「処女なんてヤッたってつまんないんじゃない?」
銃口で胸の膨らみを突く男達に、静香は動じることなく鼻で笑った。
「全員で満足したいなら、プロのお姉さんに任せなさいよ」
アキラが「はぁ!?」とひっくり返った声を上げる。
「〜何言ってんだババァのくせに…!」
「うっさいわよ、アキラ。子供は目ェ閉じてなさい」
「〜〜ざけんな!母親のエロなんざ見て堪るか…!!」
思わぬ静香の言動に、面々はそれぞれに何とか拘束から逃れようともがく。

そんな男性陣を見向きもせず、静香は不敵で 強気な ニヤリとした笑みを見せる。

「そんなに女の身体が恋しいなら、生で見せてやろうじゃない」

その笑みに、咄嗟に中条だけが舌を打って 苦々しく眉を寄せた。
彼は、なぜ静香がそこまで強気な態度に出られるのかを、知っていた。

「あたしをイかせるほどのテクがあるなら、思う存分楽しみな」
静香は そう言いながら、男達の前でTシャツを堂々と脱いだ。
細く華奢な下着姿を、真正面から見せつけるように男達の前に立つ。
口笛を吹いて下卑た笑みを浮かべていた男達の顔は、その瞬間、真っ青に引き攣った。

「!?この女…!」
「…!!」
性欲に爆発しようとしていたはずの男達が、怯えきった表情へと変わった。
静香の背中に庇われていた奈緒も、ハッと両手で口を押さえ 驚愕に声を飲んだ。

「―…!?」
狼狽する男達のその後ろで、拘束を解こうと暴れていたアキラが、目を見開いた。
横に並ばされた優希、雅紀、美柴も息を飲む。
銃火器を構えた男達の隙間から 静香の姿が見える。

その脇腹からヘソ、そして胸の下までの皮膚が、腐ったように黒ずんでいた。

「今ここであたしを抱いてくれる男がいるなら名乗り出な!」
集まる視線を笑い飛ばす静香は、持っていたTシャツを男達に向かって 投げつけた。

「ひゃあ…!?」
Tシャツが顔に当たった男が 死ぬほど間抜けな声を上げた。
「う、うわあああ!!!」
構えていた銃を投げ捨てて、男は布地が触れた頬を両手で叩くように拭きとる。
「っ!くそ、こっち来んな!!」
その動揺に煽られて、他の男達もジタバタし始めた。
「この女 感染してやがった…!!」
「くそ…!!」
「ゃああああ!触った…!触ったぁああ!!」
銃を捨てた男はもうその時には悲鳴を上げて 駆け出していた。
その男に追われるように、数名の男達も逃げていく。

「あの世で待ってな 糞野郎共が!!」
みっともなく逃げていくその背中達に向かって、静香は叫んでいた。

「さて。じゃ、残った僕ちゃん達は、お姉さんが優しくイかせてあ・げ・る」
そして、残った男達…否 怯えて動けなかった男達との距離を詰める。
「っ…くそ…来るな!」
「〜この女ふざけやがって!」
残された者達は ギリと唇を噛んで、再び銃を静香に向けた。

その銃口を きょとんと不思議そうな顔で見てから、静香は そっと確信犯的に微笑んだ。

「あら。あんた達知らないの…?これ、空気感染すんのよ?」
「ー…!?」
ヒッと凍った男達。銃を捨てて 両手で呼吸を押さえる。
少しでも吸気を少なくしようと息を潜めて、震えた瞳孔で静香を見る。
祈るように 肩を震わす男達。
その様に静香は「あははは!」と 女王のように高らかに笑った。

「今更手遅れなんだよ!」
静香は、Tシャツと共に被る猫も脱ぎ捨てていた。
ぺッと男達に向かって唾を吐き捨てる。
その唾液に 過剰に反応した男が、悲鳴を上げた。
腰を抜かして 転んだその男の額を、静香は躊躇なく上から踏みつける。

「てめぇ…子供達にまで手荒な真似しやがって。お前らみたいなクソ男のモノなんか誰が銜え込むかよ」

足蹴にされた男は 静香に触れることも出来ない。
見上げる裸体は、明らかに正者のそれでは無かった。今にも腐り落ちそうな皮膚。
男は何度も「頼むから触れるな」と叫んでいた。

「……覚悟しな…」
ぐんと低くドスを効かせた静香は 笑みを消し、男から足を退ける。
そして すでに逃げ腰の男達を見据え、大きく一歩近づいた。
男たちはその一歩に竦み上がり、一目散に退散していった。
転がるように散っていく男たちは 武装をすべて放り出していた。

「………―」
しばらくすれば その幾重にも聞こえる足音は消え去って、周囲はしんと静まり返った。
あとに残ったのは、拘束されたままの優希達と 立ち尽くしたままの奈緒だけだった。

世界の終わりを見るような悲壮な表情で自分を見上げ、絶句している子供達。
口を押さえたまま、その場でポロポロと涙を流しはじめる奈緒。
「…馬鹿が」と呟いて舌を打つ中条と、「…なんで」と目を見開いたままの美柴。

今までの時を共に生き残ってきたメンバーを見やり、静香は 少し困ったように小さく笑った。

「……あーもうバレちゃった。もうほんと、男ってバカばっかり」
吹っ切ったような明るいその声に、アキラはぎゅっと身体中を締め付けられるように強ばった。

「まぁでも、この身体も役に立って良かったわ」
「〜〜!!」
地面に突っ伏したままだったアキラは、額を砂利に押しつけ 強く強く唇を噛む。

「〜〜〜なんでだよ…ッ!!」

絞り出すような痛々しい声で、地面に向かってそう叫んだ。




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