小説 | ナノ


▼ 白鴇姫

■注意事項■
このお話は 童話「白雪姫」をそこはかとなくパクッたパロディーです。
未来捏造中鴇シリーズでの子供達も出てまいります。

美柴鴇‐白鴇姫
中条伸人‐王子
小人‐優希,アキラ,雅紀
女王様‐北原
家来‐店長

ぶっちゃけアキラの夢オチです。
どうか寛大なお心で楽しんで頂ければと思います。



Snow White


白鴇姫の母上が亡くなり、城には新しい女王がやってきた。
女王は毎朝 鏡に向かって 「隣国の王子が一番好きなのは誰か」と尋ねるのが習慣だった。
隣国の王子は中条伸人といい、特定の伴侶を持たない今だ未婚の王子である。
魔術の心得があった女王にも、手に入らないものが一つだけあったのだ。
どれだけ唱えられても、鏡の中は誰を映し出すこともなく真っ暗で、沈黙を守り続けていた。


今日も、女王は着飾った姿で鏡の前に立つ。
先日隣国へ送った 王子の下着は届いただろうか。
今回も中条君にとても似合うだろう、ヒョウ柄の真っ赤なボクサーパンツを選んだ。
彼があのピッタリと張り付く下着姿で私の前に乱れ落ちると思うと、こんな朝からヨダレが止まらない。

「さぁ!鏡よ鏡よ鏡さん、中条くんが世界で1番好きなのはだぁ〜れ?」

今までも、私はそれはそれは数え切れないほどの贈り物を中条君にしてきた。
どれだけ私が彼を見ているのか知って欲しくて、お気に入りの中条伸人激写コレクションもアルバムにして届けたことがある。
恋のアピールに、ぬかりはない…!
返事が来たことは一度もないが、それはきっと中条君が照れ屋さんなだけなのだ。
不良はツンデレ。これ王道にして如何に。

女王がうっとりと想いを馳せていると、初めて鏡に異変が起こった。

ついに、そこにある一人の姿が映し出されたのである。

「こ、これは…!!」
その姿に、女王は息を飲んで凍りついた。

鏡に写った壮麗な容姿。どこか憂いの残る表情。
それは紛れも無く、女王の義娘、美柴鴇 白鴇姫であった。

「わ、私ではない…だと…!?」

女王は怒って、家来に白鴇姫を殺してしまうよう命じた。
家来は姫を森の中へ連れだして殺そうとしたのだが、呆気なく返り討ちに遭い 姫を逃がしてしまう。
手ぶらで城に帰れば 逆上した女王は家来を亀甲縛りにして貞操を奪うだろう。
恐ろしくなった家来は 鹿を殺してその心臓を取り、城に持って帰って女王に白鴇姫は殺したと告げたのだった。


「………迷った…」
一方、女王の手を逃れた白鴇姫は、森の中をさまよっている内に、三人の小人達の家に辿り着いていた。
「……疲れた…」
家来との死闘を終えた姫は疲れ果て、ぱったりと小人のベッドで眠ってしまう。
そこへ帰って来た小人達は 我が家への侵入者にひどく驚いたものの、姫の事情を聞くと 快く一緒に暮らすことに決めた。

「北原さんヒドイ!鴇を殺そうとするなんて許せない!」
「…いや、とりあえずトキさんその手に持ってる竹刀捨てね?」
「血が付いてる…!ちょ、その竹刀 血が付いてるように見えますけど…!!」
「……殺れれる前に殺らないといけなかった…」
「これ良い子が読む童話だからぁ…!!」


城では 女王の魔力がより一層侵食していた。
白鴇姫を亡き者にし、これでまた中条王子を狙えると踏んだ女王は、また鏡の前に立つ。
「…白鴇姫には悪いけど、恋愛とは常に戦争なんだよ。中条くんをもらうのは私だ。」
そして唱える。

「鏡よ鏡よ鏡さん、中条くんが世界で1番好きなのはだぁ〜れ?」

鏡に映るのは、森の中の小さな家で小人達に慕われ 穏やかに暮らす、白鴇姫の姿だった。

「………。」
女王は 背後に控えていた家来に それはそれは綺麗な笑顔で振り返る。
「……皮ベルトと麻縄、その裸体を縛られるならどっちが良いか選ばせてあげよう」
虚偽の報告を知られた家来は血の気の引いた顔で ふるふると子兎のように震えた。



家来へのお仕置きを終えた女王は 再び姫を殺そうと、魔術を使って毒鮭にぎりを作り、老婆の姿に化けると 鮭にぎりを持って森へ出かけた。

「……知らない人から食べ物は受け取れない」
元から警戒心の強い白鴇姫は、そう簡単には老婆からおにぎりを受け取ろうとはしなかった。
しかし、女王は敵のことを調べ尽くし、研究し尽くしていた。

「この具に使われている鮭は 1万尾に1尾の割合でしか獲れないと云われているため『幻の鮭』と呼ばれています。鮭児といえば知る人は知る代物ですよ。程よい甘味とたっぷりの脂はとろけるような舌触りで、それはそれは」
「もらう」

白鴇姫は、若干ちょろかった。



小人達の留守を狙って姫に近づいた女王は、こうしてまんまと毒鮭にぎりを姫に食べさせてしまった。
「…ッ!!」
おにぎりを食べた白鴇姫は、すぐに息が詰まって倒れてしまった。
「………普通の…鮭……」
気を失う間際、白鴇姫は酷く切ない声でそう呟いていた。


仕事から帰って倒れている姫を見つけた小人達は嘆き悲しみ、姫をガラスのお棺に入れて見守った。

「……俺気づいてるんだけど、これって俺の夢じゃね?お前らなんで毎回俺の夢に出てく」
「鴇ぃー!まさか鮭に釣られるだなんて…!簡単すぎるよぉ…!」
「無視か」
「ねぇ…優希、アキラ…こうゆう時、どうすればいいか知ってる?」
嘆き悲しむ優希とアキラの背中を見つめ、雅紀は真撃な顔付きで告げる。

「お姫様は王子様のキスで目覚めるのが通例だよ」

「なぁそれどこ情報?ソースどこだよ?」
呆れ顔で問うアキラをよそに、今度は優希が神妙な表情で 胸に手を当てる。

「……ねぇ聞いて。皆には黙ってたんだけど、実は……僕は小人じゃなくてとある国の王子だったんだ…。だからここは僕が鴇に熱いキスを、」
「あからさまな嘘つくんじゃねぇーよ、お前は確実に小人だ!!」
「優希くんと鴇さんのキス!!ひゃっほーう!!」
「黙れキモオタ」
「〜鴇にキスなんて、誰にもさせないんだからね!絶対!!」
「いやだからダメだろそれ。早く中条さん呼んでこいよ」
「やだ!中条さんと鴇のキスなんて、僕、見飽きてるもん!」
「俺だって見飽きてるっつーの…!!」
「ええ!?何それ羨ましいんですけど…!?」
「〜だから黙れキモオタ…!!」

そこへ、白馬に乗った隣国の王子が通りかかる。

「オイ、さっきからギャーギャーうるせぇーぞお前ら。何やってんだ?」
「うわぁ…白馬とか…。中条さんマジ似合わねぇ〜…」
「黙れアキラぶっ飛ばすぞ」
「…物騒すぎない?ねぇこの童話物騒すぎない?」
「っ!うゥ…中条さぁーんっ!!」
頑なに自分がキスすると主張していた優希は 王子が現れると途端にその胸に飛び込んで泣き始める。
「あ?何だどうした優希」
「〜ゥうう!鴇が…!鴇が北原さんに毒盛られて倒れちゃったのー…!!助けてぇ…!」
えぐえぐと涙を零して 優希は中条にしがみつく。
その様子に アキラは肩を落として 呆れ笑う。
「……優希お前…あっさり中条さんに助け求めてんじゃねぇーか…」
やはり 夢の中でも、優希は優希なのだと思う。

「あーもう誰でも良いから早く鴇さんにキスして…!俺のアイフォンの充電がヤバイ…!」
「お前もさっきから地味に動画スタンバってんじゃねぇーよ…!!」

雅紀が動画を設定している中、王子はガラスのお棺に眠る白鴇姫の傍らに膝をつく。
死んだように横たわる姫のあまりの美しさに、王子は、思わず口づけを落とす。

すると姫の喉に詰まった毒鮭の欠片は飛び出し、なんと姫は目を覚ました。

「…ッコホ…ケホ…ッ!…?中条さん?」
「…ったく。俺以外から下手なもん貰うんじゃねぇーよバカが」

ガラスのお棺から身を起こした姫の額に もう一度 ちゅとキスをして、王子は小さく笑う。
こうして、白鴇姫と王子は結ばれた。



━━━━



「……っていう夢を 俺は昨日見たんだよ…」
「なんていうかさ……アキラくんの夢ってたまに全力でBLですよね」
(疲れてるんじゃない?)


■良い夢を!(笑)



[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -