2011/04/09 ■IWGP(西一番街テイクアウト)パロ。優希アキラまちゃvsチンピラ。 「ねぇ誰にも言っちゃ駄目だよ。あたしはここで泣いたから全部忘れる。大丈夫。いつもみたいに我慢しちゃうから」 11歳の女の子が、そう言って優希の手を握り締めて泣いた。 優希はその手に答えるように、しゃがみこんで背中をそっと抱きしめる。 雅紀はいつもよりずっと力強い声で「香織ちゃんは強いね よく頑張ったね」と涙を拭ってやる。 俺はといえば 香織のバッグから携帯を抜き取って 奴らへの短縮を押した。 3コールで繋がった。向こうが何か言う前に言ってやった。 「今夜12時に三人用意してどん詰まりの駐車場に来い。」 俺だと分かった男が せせら笑うのが聞こえた。 「タイマンでも張ろうってのか。いいだろう 逃げんなよ」 「そっちがな」 通話を叩き切る。優希と雅紀が強く頷き返してくる。 もう女が殴られるのはたくさんだ。この三人が本気になったらどうなるか、思い知らせてやる。 12時五分前。俺と優希と雅紀はどん詰まりの駐車場に立っていた。 多和田組はこの都会じゃ弱小やくざだ。でもやくざには変わりない。その下っ端連中とはいえ やくざにケンカを売ったとなると、こちらの身内も黙ってはいなかった。 「アキラ!思いっきりやっちまいな!」 「……なんでついて来てんだよ」 母ちゃんが胸の大きく開いたワンピース一枚で ガッツポーズを俺に見せた。昔の血が騒ぐ、とかなんとか言っていたが……まぁ見届け人は確かに必要だ。 母ちゃんの隣には 鴇さん、中条さん、香織、奈緒が続く。 12時ちょうどになると、裏小路から多和田の組長と年少組の男3人がぞろぞろと現われた。後ろには派手でセクシーなドレスで着飾る外国人娼婦達が固まっていた。 「ギャラリー多くね?」 雅紀が楽しそうに言う。こいつは緊張感がまったく無いな。と思って優希を見ると (寒くないのかな?)なんて暢気な手話を返していた。 「香織、お前を殴ったのはあいつか」 俺が 真ん中にいるドレッド頭の奴を示して聞くと、香織は震えるように頷いた。奈緒の腕に縋るようにしがみ付く。 奈緒はその頭を守るように抱くと、俺たちを強い眼差しで見た。 (絶対に負けないで。) 凛とした奈緒の声が俺たちの耳の奥に届く。それは俺にとってどんな声援よりも力になった。 俺たちは頷き返して、多和田達のほうを向きなおした。 5メートルほど離れたところまで進み出た組長が低い声で言う。 「逃げずに来たな。お互い言いたいことは山ほどあるだろうが、今日は素手で思う存分やり合ってもらう。どっちが勝っても恨みは残さない。そっちの条件は ソワレの店に手を出すなということでいいな」 「店だけじゃない。働いてる女にも、その子供にも、だ」 俺が訂正すると 組長はゆっくり頷いた。 「了解した。こっちは最初にユーイチがいく。そっちは誰だ。」 茶髪の若い男が一歩前に踏み出した。雅紀がひょいと手を上げる。 「俺いってくる。初戦は弱い奴からいくもんでしょ」 いつもの調子を崩さない笑顔に 呆れて息をつく。 「お前な、マリカー勝負に来てんじゃねーんだぞ」 「分かってるって」 ぽんぽんと俺の肩を叩く雅紀の横顔から、すっとおふざけが消えた。 どこからどう見てもモヤシな雅紀が出てきて、ユーイチはにやりと笑った。なめて手招きなんかしてみせる。ギャラリーの娼婦達の言葉は 聞くに堪えない汚い言葉ばかりだった。 「……中条さん、あれ」 雅紀とユーイチが駐車場の中央で向き合った時、そっと鴇さんが呟いた声が聞こえた。思わず俺も二人の視線を追う。 駐車場の入り口にすっとメルセデスが停まった。クジラのようなセダン。音も無く後部座席の窓が降りると、東条組代行の顔が覗いた。 優希の父親が10代の頃、たった半年だけ東条組の年少組に属していた話を思い出す。 どんな常識も秩序も受け入れない壱希のことは どこの組も見放しているが、あの代行だけはまだ一目置いているようだった。 そうして、以前の優希と壱希の一件から優希にも気があるらしい。もちろん優希はその気なしだ。 どこかからこの小さい抗争を聞きつけて、どんなものかと顔を出しに来たのだろう。 代行に気がついているはずの優希は、一回もセダンのほうに目もくれてやらなかった。まっすぐ雅紀とユーイチの試合を見ている。可哀想なやくざさん、全くの片想い。 「…ただの見物だろ。放っておけ」 中条さんはそう言ったが、二人の顔色は変わっていた。同じように 多和田の組長もセダンを注視していた。きっと誰の裏筋か思案しているのだろう。 残念ながら、あれは誰の裏でもなく、ただのスカウトマンだ。しかし名の知れた組の幹部が来たことで、この場の雰囲気はぐっと締まった。 ■色んな話パロって詰め込んでごめんなさい。笑 comment(0) |