Luna Nokto
 


ゆっくりと夕日が沈んでいく。

「空が赤くなってきてるよ」

「そうだね。」


青藤色の夜空に、撫子色の夕空がゆっくりと混ざっていく。


二人は手をつないでいた。


――Lumo
――Lumo


どこからともなく声が聞こえる。

娘は静かに青年に寄り添った。


ぽつぽつと光が浮かぶ。

緑、赤、青、白…

浮かんだ光は模様を描き出す。


――Lumo Lumo
――Espera de Lumo

聞こえてくる不思議な声に導かれるかのように。星々のように散っていた光は、文字を作る。

"Gi celas Ihatovo"


青年は、小さくつぶやいた。


「Silentu.」

「いま、なんて?」


娘が聞き返すと、ばつが悪そうに頭を書きながら青年はいった。


「なんでもない。これは、だれの魔法かな?」


――Gi estas Ihatovo.


青年の問いに答えるように、不思議な声がする。


「イーハトーヴォねぇ。ふぅん。」

「ねぇ、セン、イーハトーヴォって?」


――Gi estas visio.


「そう、それは幻。場所の名前であり、人の名前であり、古の魔法の――。」


センとよばれた青年は、空中に浮かんだ文字に答えるようにそう言った。


「古の魔法?センがいつも使ってるんじゃないの?」


「あれは、違うさ。古の魔法を使うのはもう少ないよ。昔から生きてる人だけさ。」


さ、帰ろう。


そういって青年は、娘と手をつないでその場を去っていく。


空はもう宵闇に飲み込まれていた。


――Gis revido, Ihaz.



Fin.

あとがき。

文章内外国語はすべてエスペラント語です。
これの所為で4周年記念・・・何でもないです
ということで、退廃的ファンタジアの番外でした。
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