むかしむかし、
あるところのあるお城のある部屋に
ある王様がいました。

王様はいつも色々なものの
「最高」を探していました。


色々な国の美味しい料理を
最高のコックに作らせました。

色々な楽器を組み合わせて
最高のオーケストラを組んで
最高の音楽を奏でさせました。

色々な画家を雇い
最高の絵を描かせました。


王様は他にも
色々な「最高」を
世界中から集めました。

王様は最高に溢れた毎日に
とても満足していました。



ある日、
王様は新しい「最高」を呼びました。

それは
「最高の手品師」でした。

最高の手品師は今まで王様が会った
色々な「最高」の人々とは違い
手品を見せた後、王様と話をしました。

「王様、お聞きしたところによると王様は数々の「最高」を集めているそうですね。」

「そうじゃ、お前さんの手品も見事だったぞ」

「それでは王様。今までの最高の料理のなかで、何が最高でしたか?」

「うーん、最高のイタリアンシェフに作らせた最高のビッツァがうまかったな。だが最高のロシアンシェフに作らせた最高のビーフストロガノフも美味しかった。どれも選び難い!!!」

すると最高の手品師は眉をひそめいいました。

「それでは「最高」、「最も高い」つまりこの上ないもの、に反します。王様は料理だけでなく、他のあらゆるものでも「真の最高」を知らないのです」

それを聞いて王様は大変怒りました。

「無礼者!!!
ワシは今までありとあらゆる最高を求めてきたんじゃ!それを否定するとは処刑してやる!!!!」

王様の隣の兵たちが
最高の手品師を捉えました。

しかし手品師の体は
するりと兵を通り抜けこう言いました。

「落ち着いてください、王様。
実は私はそんな王様のためにやって来た魔法使いなのです。」

王様は首を傾げました。

「どういうことだ?」

魔法使いを名乗る男はいいました。
「だから魔法を使えます。最高の。
さっきの手品も本当にタネも仕掛けもないので手品とは言えないかもしれません。」

王様はいいました。

「確かにさっきの手品は今まで見た手品とは何かが違った...それでその魔法使いがワシのために何を?」

魔法使いは笑顔でいいました。

「真の最高を知らない王様に、私の魔法で真の最高の料理、音楽、絵画。その他にもあなたの望む物の最高を出して見せましょう。」

王様も笑顔でいいました。

「そうか!では早速、最高にウマい料理をだしてくれ!」

魔法使いが呪文を唱えると
王様の目の前に
白いご飯が一杯出てきました。

「めしあがれ」

王様がそのご飯を一口食べると
目を丸くして
あっという間に完食しました。

「ウマイッ!!!これはなんだ!!」

魔法使いは笑顔でいいました。

「それは「最高」に美味しい食べ物です。」

王様は次々に頼みました。

「最高に美しい絵画を出せ!最高に心地よい音楽を流せ!最高に面白いゲームをだせ!最高の、最高の!!」

魔法使いは次々と王様の望みのものを出しました。

「素晴らしい!うちにずっといてくれないか!?金ならいくらでもだそう!」

魔法使いは悲しい顔で言いました。

「とてもありがたいのですがごめんなさい、私は魔法使い。同じところに居座ると人が集まってきて世界のバランスを崩してしまいます。居場所を特定されるわけにはいきません。」

言うや否や、
魔法使いは姿を消しました。

王様はありったけの兵を動員して
魔法使いを探しましたが
魔法使いはどこにもいませんでした。




しばらくして王様は苦しみました。
悶え、怒り、苦しみました。

「満足しないっ!どんなに最高のシェフを呼んでもあの日の白米には敵わない!
どんなに最高の画家を呼んでもあの日の絵画には敵わない!

真の最高なんて知らない方が良かった!!」


王様はその後、何も食べずに死んでしまいました。


〜fin〜

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