04 《Playwright side》



 僕が台本を書きあげないことには、練習は始まらない。夕食を済ませた僕は早速机に向かった。窓の隙間からは心地よい夜風が流れ込む。創作活動は実に2、3ヶ月ぶりで、なんか緊張する。

 いつものように僕は、僕自身に問いかける。


(僕は何が書きたい?)

(僕はこの作品で何を伝えたい?)


 目をつむって首をぐるりと回すと、パキパキと関節が鳴った。よし、舞台背景から、考えよう。

 世は階級社会。王家と結ばれる女性はそれなりの地位が求められていたはずだ。物語で描かれている、雷に打たれたような一目惚れ、常識なら絶対に実るはずのない恋、王家のしきたりに束縛される苦しみ、己の低い身分への恨み……。その全てを覆す「シンデレラ」という話はなるほど万人に夢と希望を与える話かもしれない。

 話が話だけに、主人公二人が目立ちがちになりそうだ。そんなことがあっては[脚本家]としては忍びないことである。想像するんだ。二人の恋が実るだけの必然性が背景にあったとしたら。

 [王子]はなぜ身分もわからない[シンデレラ]に固執したのか?上流階級だけの社会に反抗心を持っていたんじゃないか?当時の王家は血縁が重要視されていたに違いない。何か自分の中で変わりたいと思っていたのでは?……おそらく二人の結婚の障害の一つは、そこにある。二人の結婚は社会が、すなわち王家が許さなかったはずだ。

 [王子]の希望を王家全体で抹消させることくらい、容易にできただろう。街を巡って靴の持ち主を探すなんて、どうしてそんなことができるんだ。王家の中に[王子]の味方がいたに違いない。その人は[王子] の唯一の理解者であり、[王子]に最も近い人物。さらに、上流階級である必要もない人物……。[執事]いや、この場合は[じいや]の方がぴったりだ。

 次に、[シンデレラ]に注目しよう。[シンデレラ]は家庭内でも孤独や屈辱と戦ってきた。それでも彼女が美しかったのは、彼女の心が清らかであったからに他ならない。自分の美しさを鼻にかけるのではなく(あまりのみすぼらしさに自分でも気づいてなかっただけかもしれないが)、未来に希望を持ち続け素敵な出会いを待ち望んだ。

 しかし、いざ[王子]に恋をした時、本当に[シンデレラ]は幸せだっただろうか?……僕はそうは思わない。




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