03 《Prince side》


 俺は[王子]になったと知った頃、軽い絶望感を抱いていた。高校3年にもなると、すべての行事に枕詞のように「最後の」がつく。最後の遠足、最後の球技大会、最後の体育祭、最後の大会……。所属していた陸上部も引退し、俺は全てを奪われたような絶望に苛まれていた。過ぎ去って初めて“終わり”に気づき、そして今文化祭の準備が着々と進められつつある。そしていつか、文化祭も終わるんだ。

 陸上部では楽しく、頼もしい仲間に出会えた。尊敬する先輩、コーチにも出会えた。可愛くて少しニクい後輩もできた。振り返ればずっと走るだけの日々だったけど、自分でも馬鹿みたいになって打ち込んだ。この日々さえあればもう、他には何もいらなかったのに。


「大学でも陸上、続けるか?」

 一番のチームメイトの原田と、こんな話をしたことがあった。確か最後の大会の日の、帰り道に。

「そうだなあ、辛かったけど、今じゃ走ってないと逆に辛いしなあ。多分続けるんだろうなあ」

 のんびりとした口調で、原田はそう答えた。

「俺も。◯◯大学入って、もっと走るつもりだ」

「マジか!俺もそこ行こうと思ってる。またお前と走れるのか、いいなあそれ」

 地元の大学は、駅伝で毎年好成績を収めることで有名だ。俺も原田も、まともに受験勉強すればおそらく合格できるはずだ。


それなのに。

"最後"とは、何と辛いことだろう。俺は小さくため息をついた。



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