27《prnce side》

 疲れが心地良く、いつもより柔らかく感じるベッドに深く体を沈めた。誰も触れていないベッドは、真夏の夜でも熱い体にひやりとした。

 今日の俺の出番は、すんなりと済んだような感じだった。「練習の成果が出た」と言うのが大げさな気さえする。あくまでも、練習通り。そんな感じ。でもそれがどれだけ重要で、大事で、難しいことか。この3年間の陸上部での経験が、俺にそう諭しかける。それがまた、誇らしかった。

 ただ、物足りない思いがするのも、事実だった。練習通りに、確実に物事が進む……それは確かに願ってもないことだが、この祭りが俺たちの前に姿を現すことは、もうない。「無難」で終わらせるのは……それこそ「無難」だ。つまり、つまらない。


 何か一枚、噛んでやりたい。

 俺はこんな「無難」な祭りのために頑張ったんじゃない。無気力状態に近かった俺に、この劇「シンデレラ」はやるべきことと希望を与えてくれた。それはつまり、「感謝」だ。……誰に?


「……そうだ、いいこと思いついた」


俺はおもむろに携帯を開いて、メールを打ち始めた。


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