25 《playwriter side》


 最初に返信が届いたのは、夜中の0時頃。[王子]こと宇藤からだった。文章は穏やかで、彼がクラスで一番落ち着いているだろうと思った。

『メール読みました。俺も緊張してる。らしくないよな。』

 そうなのか、と思ったが、よく考えればこの時間に返信してくれたのだ。彼も目が冴えてしまっているのだろう。


『でも、不安はない。あんなに練習したもんな。あんなに打ち込むことができたのは、自分でも不思議だ。北島のお陰で、本気で練習することができた。楽しいことも、本気でやんなきゃつまんないよな。「シンデレラ」の練習はすごく楽しかった。』

 僕は[王子]がそう思っていてくれたということを知れただけで、胸がいっぱいになった。

『今度はキャスト陣が頑張る番。精一杯やるよ。』

 君が主役で良かった。……なんて、照れ臭くて言えなかった。

 次に来た返信は、杉澤さんからだった。勇気の出る言葉が並んでいて、彼女の芯の強さを感じた。


『……あたしの中で、この劇が完成することが一番の目標だったからね。』


 僕も、そうだった。この劇さえ完成すれば、あとはもう何も求めたりはしないだろう。それ以外のことを求めるのは、贅沢に過ぎるというものだ。僕にとって「シンデレラ」の劇の経験は、それほど贅沢な経験となり、それはとても幸福な経験となった。



 僕は、幸福だったのだ。


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