21《playwriter side》
所詮僕はただの[脚本家]だったのか?
『私は影で、皆さんの作り上げるドラマが見たかったんです』
人気テレビドラマの脚本家と出演タレントとのスペシャル対談番組をぼーっと眺めていた。脚本家は黒くて地味な衣装で華やかなタレントとの対談に臨み、控えめな笑顔をしていた。
『私の仕事はドラマのほんのスタート地点でしかないんです。文字だけの台本を生きたものにしてくれるのは、決して私なんかじゃなくて、役者さんたちなんです。
そうあるべきなんです』
プツン。チャンネルで画面を消し、立ち上がって主電源も消してしまう。
「くそっ……」
僕は所詮、ただの[脚本家]にすぎない。
でしゃばることなんてない。これしきのことで傷ついて凹んでいるような奴が、クラス全体をまとめようだなんて無茶な話だったんだ。
この悩みが、半ば被害妄想がかっているのも、重々承知だけれども。
何処かで読んだことがある。『集団は一人が欠ければ5人を欠いたも同然で、中心人物が欠ければそれはもう集団として機能しない』と。僕が今日、集団としての全てを失ったのだとしたら。それもこれも、僕がでしゃばったせいだ。
僕は、僕がクラス全体を牽引する様を夢想していた。そういう幻想を抱いていたに違いない。なんの落ち度もなくクラスを統括し、文化祭終了後に拍手で称えられているところまで妄想していた。
「……ふふ……ははは」
滑稽に過ぎる。これはもう、一種のギャグだ。
僕の創作の原動力は想像力だ。空想の中は軽く、心地よく、幸福感に満ち満ちていた。でも今は、想像することが怖い。自分の想像の行き着く先と現実とのギャップが怖い。
「これが、[シンデレラ]の苦しみ……」
[シンデレラ]に比べれば僕の苦しみは低俗極まりないけれど。現実の中の僕は、広い教室の中で一人アホのようにしゃしゃり出て。
[シンデレラ]と比べられる資格さえ、持っていない。
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