01 《Playwright side...》




 僕は[脚本家]になったと知ったとき、少々不満を抱いていた。


 僕北島は、文学部に所属していた。だから、文章を書く、とくに、小説の創作は得意だし、趣味でよくやっていた。


 話を一から創作する必要がないのが不満なんじゃない。むしろ話を流れが決まっている方が書きやすいというものだ。僕の好みが劇作に向かない――奇想天外な設定のSFやファンタジーしか書けないとか――というわけでもない。不満だったのは、僕のここでの任務が、小説の創作ではなく劇の脚本を書くという点全面においてである。


 僕は今までに一度も劇の台本とやらを書いたことがない。劇作に詳しいわけでもない。「見たことのある戯曲・ミュージカルは何?」ともし尋ねられても返答に窮してしまうくらい、何も知らない。


 今年の文化祭は高校3年生の僕らにとっても大変意味のある行事で、それだけに中途半端では終われないし、誰もが納得できる完成度でなければならない。今回僕たちが文化祭で演じることになったのは、老若男女がそのストーリーを知っているであろう、「シンデレラ」に決まった。台本を目にするクラスメイトを、そして劇を見にくる観客を楽しませる台本を書く……。


 僕には荷が重すぎるのではないか?僕は小さくため息をついた。





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