2月14日にあるバレンタインというイベントをご存じだろうか。

 そう、恋する乙女が主役の行事である。


 がしかし!この私はそんなリア充が浮き足立つような行事は断じて認めぬ。リア充爆発しろ。


「リア充爆発しろ……」

「またいってんのかよ」

 呆れたように頬杖をつきながら吐き捨てたのは幼稚園からの腐れ縁であるカケルだ。漢字は忘れた。


「うるせぇやい、バレンタインなんて…」

 今でも教室のなかにはチョコレートの甘い香りが漂っていて、キャッキャッと告白するしないで騒ぐ女子があとをたたない。


「俺はすでに3つくらいもらってバレンタインデー満喫済みだけどな」

「本命は?」

「一つ」

「爆発しろ」


 可愛らしい女の子が頬を朱に染めて渡す姿が目に浮かぶようで内心少し焦った。

「まぁ一番貰いたい奴にはまだ貰ってないんだけどな」

「ざまぁ」

 はぁ、とため息をはいたカケルに嘲笑うかのような笑みをプレゼントしたところでん、と右手が差し出された。

「なにそれ、おて?」

「ちっげぇわ。チョコ」


「は?」

「チョコ、俺の」

 とりあえず軽く頭をはたいて机のなかに置いてあった箱を取り出し押し付ける。

「どうせいつ渡そうか悩んでたんだろ?」

「もうほんとファック。なんなのあんたなんでわかんの。」

「お前の幼馴染みだからな」

「腐れ縁と言え。」

 幼馴染み…じゃなくて、腐れ縁と恋なんて絶対有り得ないと思ってた。

 どうせ少女漫画の世界でしかないと。

 そうたかをくくってたのに、あろうことかこの私は。


「なぁ。」


「なに」



「付き合うか」


「?!」


 チョコ菓子が入っているであろう箱と、ハートのメッセージカード。


"I need you."


「この日を心待ちにしてたんだ」

 そういって白い歯を見せて珍しく無邪気に笑ったアイツの顔をみて、慣れないことして良かったなんて柄じゃないことを考えた。

Fin.


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