出られはしなかった

日も当らぬ鳥かごからは

私はそれで満足だった

君が必要としてくれたから




「おはよう」と君は笑う。私に笑いかける。私は、君の用意した鉄格子の中から「おはよう」を返した。

閉じ込められてなんかいない。だって、私は自由だから。でもここは鳥かごの中。あなたという人が作った、私への愛であふれた、安心で、安全で、ステキな、私だけの居場所。



歌ってもいいわ。あなたがそれを望むなら。

飾り立ててもいいわ。あなたがそうしたいなら。

愛してもいいわ。あなたがそれを望むなら。

撫でられてもいいわ。あなたがそうしたいなら。

道化にもなるわ。あなたがそれを望むなら。

飼い殺してもいいわ。あなたがそうしたいなら。



ただね、私を捨ててしまうなら、このまま、この鳥かごの中で、あなたの手で、

ころしてほしいの

そうすれば私は、あなたに愛された私のままでいられるでしょう?

美しい私のままで、あなたの記憶(なか)にいられるでしょう?



誰かの愛に包まれた空間ほど、居やすく居心地のいい場所などない。

誰かの愛に包まれることほど、幸せなことなどない。

だったらいっそ、いっそそのまま死んでしまいたいのです。



愛しい人よ、どうか どうかあなたのその鳥かごの中に私を閉じ込めてください。

そしてそのまま、あなたの気の向くままに飼ってほしいの。



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あとがき
気の向くままに書き散らしてみた。愛という名前の鳥かごの中で飼われて死んでいけたらいいな、っていう理想論。現実ではない。

色について
挨拶はさわやかな亜麻色
歌う時は鮮やかな紅梅に
着飾る時は派手な金色に
愛と死は赤の象徴として猩々緋
撫でられるのはバラ色に
道化はもともとの貴色で深紫
すすをかぶって飼い殺された煤色
あなたの記憶に勿忘草
というお遊び。


黒曜石翡翠


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