08 《Magician side》


 踊り疲れて、ブランコに腰掛けた。漕いでも足がついてしまうので、座るだけ。座って、あの人のことを思い出していた。
中学の頃は、いつでも一緒にいた。どこにいくにも一緒で、二人で笑って二人で居ることが幸せだった。そんな頃も、あったのにね。どうして、こうなっちゃったんだろうね。

 彼が『別れたい』と言ってきたのが意外だった。友達の発展で付き合うことになったあたしたちは、喧嘩もしたけど相手に気を遣いあった。仲良くやっていけていた。でもそれも、相手が自分の見える範囲内にいるまでの話で。

 端的に言ってしまえば、あたしたちを疎遠にしたのは疎遠な環境に他ならなかったのだ。疎遠な環境は、相手を思いやる心を忘れさせ、過去を風化させた。彼はそうじゃなかったのかもしれない。彼は何かとあたしに会いたがっていた。あたしも最初は、彼の希望に応えたいと思って時間を作る努力もした。


 しかし、学校行事が忙しさを極めるにつれ時間も作れず、彼の連絡の相手をすることも億劫になっていった。

……あたしだって、好きな人の希望は断りたくなかった。でも、『ごめん、また今度ね』って打つ方がもっと、辛かった。

 思い出しているうちに、鼻がじんわりと痛くなる。あたし、泣いてるんだね。彼とはまだ、別れたくなかったんだね。ここまできてもまだ他人事みたいな自分を思って、なおさら悔しくて泣いた。



 完全に日がくれたのに、あたしはすぐに家に帰れなかった。



back TOP next


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -