「よくできたね」
頭をなでられて、甘い甘い飴玉を渡される。小さなころ、一つ年上の近所のお兄ちゃんからもらっていた。珍しくもないような飴玉。
今はもう見かけなくなった手作りの飴玉。
コロコロと口の中で飴を転がす。私にとっての小さなご褒美。それは私が成長してからも変わらず、私はいつでも飴を持ち歩いている。
今日はテストでいい点が取れたから語法い。私の心をほっこりと温めてくれる私の好物。
一つ年上の彼はいつの間にか他所へと引っ越してしまたけれど、彼は私の初恋の人で、彼への憧憬は今でも私の心の中に残っている。
「ハル、起きろって」
ゆったりとひなたで昼寝をしていた私を、やさしい声が起こした。
「・・・ねむい。」
私はまだ寝ていたいのに。寝返りをうとうとすると、あたたかいものに触れた。
「ん・・・・?え、あ!すいません!」
私を起こしたのは私の所属する美術部の先輩で。私が触れたのは先輩の膝だったようだ。
「ハル、よく寝てたな。起こしちまって悪かったかな?」
お詫びにこれあげる、と先輩は私の大好きな飴玉をくれた。私がいつも食べているようなスーパーの大袋に入って売ってるようなものではなくて、昔、私が近所のお兄ちゃんからもらっていた、あの懐かしい飴玉。
「あ、これ・・・・」
「知ってるの?俺の爺ちゃんが作ってるやつなんだけど。俺これが好きで、いつも持ち歩いてんだよね。」
もらった飴玉からは昔ながらの味がした
「昔と同じ笑顔で笑うんだな」
「えっ?」
先輩の声は私に届かなかったが、その笑顔は私の目に輝いて映った。
fin.
---あとがき
いつもより少し長めの王道の作品。
過去がよみがえらせた今の・・・・恋心