十月三日
 十月三日、金曜日。
 今日も、図書室登校することにしていた。父に送ってもらい、駐車場につくと、待っていたのは、司書のサガさんだった。
「おはよう、ユキヤくん」
 少しだけ、ほんの少しだけど、うれしかった。いや、嘘だ。ナガタ先生やカトウ先生が待っているときより、よっぽどうれしかった。
「なにか勉強するもの、持ってきてる?」
 図書室に入ると、サガさんは、そう聞いてきた。
「一応、ありますけど」
「どの教科がある?」
「数学と、国語ですかね」
「お、国語なら自信があるんだよ。教えてあげるから、やってみない?」
 サガさんが勉強を教えてくれることになった。
 さっそく問題を解く。問題を解いている姿を見るなり、サガさんは感心していた。
「お、意外とできるじゃん。国語、得意なの?」
「ええ、まあ」
 久々に褒められたような気がする。思春期だからか、素直には、喜べなかったけれど。
「懐かしいな、図書室で勉強」
「サガさんも、図書室で勉強したことあるんですか?」
「うん? ……まあね」
 サガさんは、なぜか、少し焦った表情をした。
 今日も昼休みの前に帰宅した。だんだん、生徒と会うことが怖くなってきた。弱虫とか、さぼり、などとクラスメイトに陰で、言われているような気がした。
 夜になり、両親が帰宅すると父が、「来週の月曜の夕方、学校で先生と話し合ってくる」と言っていた。どうやら僕の知らないところで、話が動いていたようだ。
 森が、よりいっそう静かになる。嵐の前の静けさか、それとも――。
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