第7話
私の前の席へとやってきた女の子は人気者だ。
休み時間になれば複数人の女の子の中心で楽しげに笑ったり話したりしていた。
窓際席の特権、壁によりかかるをフルに活用しながらボンヤリ松永さんの後ろ姿を見ながら仲良くなる方法を考えてみる。
仲良くなれたらいいなぁ…とは思いつつも、彼女を取り巻く女の子たちと並ぶ気はなかなかおきないしなぁ…ゴソゴソ本を鞄から取り出しつつ思想に耽った。
「ほんとそれなー!」
キャイキャイと盛り上がる女の子らしい高い声をバックミュージックにして本を開いた。
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ブックカバーに覆われた本の名前は未だにわからない。
肩下にまで伸びた髪を耳にかける仕草をぼんやり眺めながら、声をかけるかかけないべきか悩んでいた。本当のところは話してみたい気持ちが大きいだけなのだが。
「野む」
「とーおーるぅー!!!」
チッ、と舌打ちをして声のした方を睨む。隣のクラスにいる幼馴染み…ニヤニヤと笑いながら俺に手を振っている。
「お前ほんっとタイミング悪いのな」
「もしかして遥ちゃんに話し掛けようとしてたわけ?」
「馴れ馴れしくしてんじゃねーよぶん殴るぞ」
「おーこっわこっわ、そんなんだから怖がられるんだよー?」
「うっせーよ!」
余りにも五月蝿いから俺が話しかけてあげよっかー?なんてヘラヘラと言い放つ孝太の頭部を強めに叩いてやった。
野村がそんな俺らを見ているとも気づかずに。
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