第1話 


入学してからはや数週間、というかまだ一週間弱。

人見知りするような人ではない私は、新しく増えたお友だちの名前を覚えるのに四苦八苦していた日のこと。

喉が乾いたので、三時間目が終わった休憩時間に一番近い自販機で紙パックのグレープジュースを買ってきて教室に戻ると、今まで教室にいなかったあの橋本がいた。

「……解せぬ。」

しかも、私のイスに座って後ろのやつと話してる。そいつもチャラい雰囲気の人だから多分友達だろう…と納得するもこれ私どうすりゃいいのよ。

「あー…、おい徹。そこの席の奴が戻ってきてる」

へぇ、名前『とおる』っていうんだ。漫画のキャラにそんなのいた気がする。なんてぼんやり考えながら、とりあえず自分の席に歩み寄ってみた。チャラ男君はこいつがすみませんねぇとヘラりと笑っている。

「あ?……あぁ、悪かったな」

「?!」

冷たくあしらわれて退かないかと思っていた私は、あっさりと席をたち、しかも謝罪の言葉も添えて立ったことに驚いた。

「ッゲホ、」

「おい大丈夫かよ」

半笑いで行ってくるチャラ男に「変なとこ入った…っ!」と胸をバンバン叩きながら答える。こいつの表情腹立つなマジこの野郎…。

「ゲホ、……うえ、はー苦しかった……」

ドサッとイスに座ったころには、橋本は自分の席で突っ伏して眠っていた。いつのまに。

「なんだ、あいつ案外普通?じゃん」

制服はだらしないわピアスは左右に3つずつぐらい空いてるわ目付き最悪だわ入学早々騒ぐわでで不良にしか見えなかったけど。

「人は見た目で判断しちゃいけねぇよお嬢さん」

「私もそれ思ってましたよ、ちょうど今。」

この人の名前なんだっけ、なんてぼんやり考えながらグレープジュースを吸い上げる。

「あんた、名前は?」

「野村 遥」

俺は原田 翔、徹の馴染みだ。そういってまたヘラりと笑ったチャラ男によろしくと言葉を返した。

また一人、覚える名前が増えちゃったな、なんてぼんやり考えて国語の教科書を取り出した。



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