ひだまりの匂いに慣れた鼻をすんと鳴らし、拾う名残に綻びかけた唇を慌てて結ぶ。脳裏に浮かんだ黒を誤魔化すように、神楽は乱暴にソファーに伏した。寝転がったまま顔だけを向ければ、いつものごとくだらしなく椅子に腰掛ける気怠げな同居人。しかしどことなく不機嫌な色は隠しきれておらず、苛立ちを孕んだソレの遣り場に困っているのか視線は宙を泳いでいる。


「銀ちゃん」


死んだ魚と評されるその眼はゆるりと神楽に向けられた。覇気の無いこの顔が喧嘩のときには生き生きと輝くのだから、無駄に歳を重ねた割には大概子供だと神楽も呆れる外ない。勿論そんなことが知れてしまえば本物の餓鬼に馬鹿にされる筋合いは無いなどと怒鳴りつけられるのは明白なので、黙っておくこととするが。


「トッシー、来たアルカ?」
「……あー、また訳解んねえ難癖つけられただけだけどな。警察ってなァよっぽど暇みてえだ」
「暇は銀ちゃんの方ダロ。今日も依頼なしカヨ」
「ちっとはおめーも依頼探して来いや従業員」


嫌味のつもりだったのだろう銀時の吐き捨てた言葉に、予想されたような憤慨を見せる神楽の姿は無かった。思案顔でまばたきを数回繰り返し、何に納得したのかはっきりとした声で「ウン」と一言。思わぬ返答に目を瞠り硬直する銀時を尻目に、どこか軽い足取りで玄関へと向かう神楽。がた、ようやく我に返り立ち上がろうとした銀時に届いたのは、暢気に間延びした出掛けの挨拶とそれを遮り閉まる引き戸の音だった。








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