鬼道との出会い
「佐久間、源田、見舞いに来た」
ガラッと扉を開ければ二人いるはずの部屋には三人いた。誰だ?と不思議に見つめていたら、源田が紹介してくれた。
「同じこの病院で入院してる名字名前ちゃんだ。最近、友達になったんだ。」
俺に紹介が終わると、次は名字に紹介を始めた。
「この人が前に言った、俺達サッカー部のキャプテンの鬼道有人。」
「よろしく」と言えばノートに何かを書く名字。
《よろしくお願いします》
その言葉を見て、一瞬分からなかったが、すぐ理解した。どうしてとか、少し気になったが、何も聞かなかった。
というか、もしかしたら、俺は邪魔をしてしまったんじゃないか、と、ふと三人の手元のトランプを見て思った。見舞いの品だけ渡して帰ろうと思っていると、佐久間が「四人でトランプしようぜ」と言い出した。
源田も名字も、なにより1番、佐久間がやる気満々だったので仕方なくすることに。初めは仕方なくだったが気づけば夢中になっていた。
「鬼道強すぎ」
「さすが鬼道」
《凄いです》
「…なんだか久しぶりだな、鬼道とこういう感じで遊ぶの」
ふわりと笑いながら言う源田。
「たまにはいいよな」
「そうだな」
《また四人でしましょう、トランプ》
名字が、笑顔で俺たち三人に向けてノートを見せる。
「ああ」
「次は負けねーぜ鬼道」
「俺だって」
《私も!》
「フッ…どうだろうな」
「なっ!」
「んじゃまたな」
「ああ、また」
「試合頑張れよ!」
《さようなら》
病院を出て家へと向かう。その途中、春奈に会った。
「お兄ちゃん!」
「春奈」
「?お兄ちゃん、なんだか嬉しそう」
「ああ、今さっき佐久間達の見舞いに行って来たんだ」
「でもいつもより嬉しそう。なにか良いことあったの?」
「…佐久間達とのトランプが楽しかったんでな」
「ふーん、それだけ?」
「あ、ああ…そうだが?」
「そっかー、良かったね」
少し残念そうに言う春奈。
「…?」
そのあと、少し春奈と話し家へと帰った。
ベッドに寝転びながら、春奈に「良いことあったの?」って言われたことを思い出す。
すると名字の姿が出てきた。
そうだ…
友達が出来たんだった。
字が綺麗でよく笑う子で…
その夜、少しだけ名字の声を聞いてみたいと思った。
いつか、聞けるだろうか