【イナズマイレブンGO/霧野】
見ているだけでいいと思っていた。友達、というポジションでいいと思っていた。だけど、気持ちと裏腹に体は正直なわけで、今俺は名字を抱き締めている。
『きり、の…くん?』
「ごめん…少しだけ」
できれば、ずっと…なんて言えるはずもなく。でも彼女は優しいから。今だって、好きな奴がいるくせに、俺が震えた声で言えば優しく接してくれる。その優しさに俺は甘える。
『大丈夫だよ、傍にいるから』
ああ、なんて優しくて残酷な言葉なんだろう。傍にいると言ってもその時だけなくせに。結局は好きな奴の傍にいるくせに。
俺の方がコイツを想っているのに。俺の方が前からコイツが好きだったのに。そんな気持ちがぐるぐる、頭の中で回り出す。
……なあ、狩屋。今コイツをめちゃくちゃにしたら、お前はどうする?
嫉妬から、だんだん怒りに。怒りから、だんだん歪んだ気持ちに。
先輩に彼女を取られたら、お前はどうする?
20120906