【夏目友人帳/夏目】



『どうして夏目君はいつも悲しい顔をしているの』


「え?」


同じクラスの名字名前さん。正直、今日がはじめて話しをしたんじゃないか、というくらい関わりがない人だ。…まあ、クラスのほとんどと話しをしたことがないが。


『言えば離れるかもしれない、信じてもらえないかもしれない。だけど、1人で抱えるには大きい』


「…っ!」


一体、彼女は何を言っているのだろうか。彼女は俺の何を知ってるのだろうか。


『1人は寂しい?』


「そんなこと…」


ない、と言おうとした。けどここに来て、俺は1人じゃないと時々思う。皆優しくて、誰かの為に一生懸命で、俺なんかの為に…


『もっと自分を大切にしなよ。君は1人じゃないんだから』


ね?と、ウインクする彼女。その言葉が少しだけ、嬉しかった。


『やっぱり、夏目君は笑ってる方がカッコいいね!』


そう笑顔で言う彼女に照れくさくなりながらも、礼を言う。


「ありがとう」


『じゃあ、またね』


「え?」


スッ…と光に包まれたかと思うと彼女は消えた。


「なっ、」


驚いて俺は立ち上がる


「夏目?どうしたんだ?」


「名字が…」


「名字?そういや、今日休みだな」


珍しい、なんてクラスメイトは言う。


は?休み?さっきまでここに居たのに?


まさかな、なんて嫌な予感が頭をよぎる。


その数分後、先生が慌てて教室にやってきた。



――名字が交通事故で亡くなった――



俺は耳を疑った。


20120906




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