【NARUTO/カカシ(幼少期)】




私は兄さんをとても誇りに思ってる。それと同時に悲しい。

私は英雄の妹ではなく波風ミナトの妹。ミナト兄さんの妹。ただそれだけなのに皆は"英雄の妹"として私を見る。


それがとてつもなく嫌だった。


「あら名前ちゃん、今日はお休み?」

『いえ、今任務から帰ってきたばかりです』

「そうなの!?汚れや傷がないから、てっきり休みなのかと思ったわ。やっぱり兄妹そろって優秀なのね〜凄いわ〜」


うふっと笑うおばさんは誇らしげに言う。


「なんたってお兄さんは里の英雄ですものね」

ほら、この人もまた

『…今回の任務は楽な任務だっただけですよ』

「あら、それは名前ちゃんが強いからそう思うのよ。じゃあまたね」


そう言い残しおばさんは去っていった。


――なんたって、お兄さんは里の英雄ですものね――


先ほど言われた言葉を思い出す。

…兄さんは兄さんで私は私なの。私は英雄じゃない。


「名前」

『兄さん…とカカシ』


名前を呼ばれ、振り向けば二人がいた。気配に気づかなかったのは二人が気配を消していたから。忍びの者はたいてい気配を消してやってくる。まあ、それが癖になっているというかなんというか。


「ちょうど良かった。一楽で晩御飯を食べようと名前を誘いに行く所だったんだ。」

『そうなんだ』


するとカカシが話しかけてきた。


「任務帰りか?」

『うん、さっき帰ってきたの』

「報告は?」

『終わってるよ』

「そうか」


報告前にご飯だとゆっくり食べれないと思ったんだろう。隣でにこにこと笑う兄さんを私は気づかなかった。



◆◆◆


一楽に着き、兄さん、カカシ、私の順で座る。


『なんだか久しぶり』

「そうだね、俺も一楽のラーメン、久しぶりだな」


カカシに話しかけたつもりなんだけど……


『それもあるけど、カカシと会うの』

「名前、最近任務ばかりだったもんね」

『うん。だからカカシもだけど同級生の子達に最近会ってないから久しぶりだな、って思って。』

「もう中忍だもんな。」


今まで黙っていたカカシが話し出す。


『早く一緒に任務したいね』


まだカカシは下忍。私はもうすでに中忍になっている



「そう、だな」


いつもは"お前と一緒なんて嫌"とかなんとか、言ってきたりするのに今日はやけに素直なカカシ。カカシの隣の兄さんも少し驚いている。が、すぐに笑顔になった。


「今日は素直だね」

「別に普通です」

「いつもこうだと可愛いのに」


兄さんに笑顔で話しかけられたから、私も笑顔で『ねー』と返事した。


「…」

『あ、拗ねた』

「拗ねてない」

『じゃあ、怒った?』

「…怒ってない」

『可愛いなー』

「男に可愛いとか言うな」

『えー』

「名前、カカシは今照れてるだけだよ」

「先生、どこをどう見れば照れている風に見えるんですか」

「顔赤いよ?」

「え!?」

「冗談だよ」

くすっ、と笑う兄さんにプイッとそっぽを向き、ラーメンを食べるカカシ。速すぎてマスクを取ったのかが分からない。さすがカカシ…

じぃっと見ていたら、カカシがこちらを見てきた。


『ん?』

「あまり見られたら食べにくい」

『あ、ごめん』

「名前、カカシに見とれるのはいいけど、ラーメン伸びるよ?」

『見とれてたわけじゃ…!』

「冗談だよ」

『兄さんの冗談は本気に聞こえる』

「そうかな」

「そうですよ」

「カカシまで酷いなー」

「普通です」


***


本当は久しぶりに会ったから素直になってしまっただけ、なんて言えない。

今日、名前が帰ってくると聞いたから先生に修行を付き合ってもらった。先生は修行に付き合ってくれた日は必ずご飯を奢ってくれる。そして必ず名前も呼ぶ。二人は別々に暮らしているがなるべくご飯は家族一緒に食べようというルールがあるらしい。というか、先生がただたんに名前と一緒に居たいだけなんだろうな、と俺は思う。


ただのシスコン………


「今、カカシ俺に対して、酷い事思わなかった?」

「いえ、別に」


一瞬、心を読まれたかと思いビックリした。


「また三人で食べに来ような」

『うん!』

「え?」

「ん?カカシは嫌?」

「…いえ、」

「じゃあ決まりだな」


むしろ、せっかくの家族水入らずの時間に俺がいて良いのかと思う。名前と会えるのは嬉しいけど…。


「カカシ」

「はい」

「もうカカシも家族同然だからね」

「………は、い」


素直に俺は頷いた。



◆素直
(今日だけは、ね)
((てか、心読んだ…?))
(じゃあ、カカシは私のパシ……弟ね!)
(ちょっと待て)

20150117
去年書いたものを少し書き直しました。気が向いたら中編にしたい…




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