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「おっし、終わり!おつかれ!」
ティーダとフリオニールの息の合った攻撃で、最後のイミテーションが倒された。この世界で行動を共にするようになってしばらく、二人の連携もなかなか様になってきたように思える。
「クラウド、大丈夫かい?」
「ああ」
そばにいたセシルが声をかけてきて、オレたちは高く掲げた手のひらを叩き合わせた。ぱしんという乾いた音。いわゆるハイタッチという行為、向こうではティーダとフリオニールも同じく交わしている。さらに駆け寄ってきた二人とそれぞれ手を合わせる。この行為も、様になってきたと言えるだろうか。
互いに健闘を称え、労う仕草。ティーダがはじめたことで、今ではすっかりオレたちの習慣になっている。スポーツの選手なのだというティーダからすれば、当然の行いだったようだ。最初のうちは困惑していたフリオニールとセシルにも、すぐに共通の認識として浸透した。
「ティーダ、いつもありがとう」
仕上げとばかりの軽快な音、…とそのままセシルに手のひらを握られて、ティーダがぱちくりと目を瞬いた。
「うえ?何が?」
「君のおかげで笑顔を忘れないでいられる。助かるよ」
「うええ?なんスかなんスか、いきなり」
ティーダの声が上擦る。気持ちはわかる。突然何を言い出すんだ、とはオレも思った。
同時に、セシルだからと納得してしまったのも事実だ。まっすぐ目を見つめながら、ふわりと笑って。こんなことが許されるのはセシルくらいだな。
「オレもそう思う」
同意を求めようとしたところ、そのフリオニールが前に出て言うので、驚かされた。…そうか。おまえもそっちの側だったか。
「のばらまで何言ってんの!?」
ティーダはますます慌てて、オレのほうへ途方に暮れたような目線をよこした。助けを求められても、オレにはどうすることもできないぞ、ティーダ。
セシルたちもだ。こっちを見ないでくれ、同意を求められても困る。ティーダの存在に救われてるということなら、否定はしない…が、それをどう、言葉にしろっていうんだ?

2018/8

 



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