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1210現パロ


日陰に入ってちょっとだけ落ち着いた。息苦しいったらねー、なんだよこの暑さ。いい加減慣れてもいい気もするけど、そんな簡単にいくんなら苦労しない、水飲んで汗かくつっても限度があるって。普段は体力自慢でやってるし弱音吐く気なんてない、…けどこういうふとしたときに、力が抜けちゃったりしたら。
青い空とコンクリートの地面と。ゆらゆらしてる景色、かげろうってやつ?またあの中歩く気力がどうしても湧かない。駅までまだまだ距離あるんだよなあ。あーくそ…あのバカどこ行ったんだよ。
こんなときに限ってオレを置いて、どっか行っちゃったあいつ。こんなときだからか余計イライラするし、それに…悔しいけど、心細いっていうか。一緒にわいわいやって気紛らわせてほしいのに、そしたら暑いのなんてどうでもよくなるのに。
ヴァン。声に出して呼んでみる。小っさい声、セミに負けてどこにも届かない、何も変わらない…。
かと思ったら、かさかさってビニール袋みたいな音がして、実際それはビニール袋の音で。顔を上げた先、そいつがアホ面下げてこっちに向かってくるとこだった。お待たせー、だって。

お待たせじゃねーよ、おまえどこ行ってたんだよ。やっぱ怒ってるな、ティーダ。フキゲンな感じはさっきからずっとしてたんだよなー。コンビニ行くって言ったじゃん、言ってないね、絶対言った、言ってないって、…ほらな、すぐムキになる。まあいいけど。今に始まったことじゃない、意外と夏に弱いんだ、こいつ。今は練習とか大会とかきついこといろいろあるから余計に。
だからこういうときは、手っ取り早くこれ。
「どっちにする?」
っていうか早くしないと溶ける、言いながら袋開けた途端だった。わあ!さすがヴァン、わかってる、持つべきものは親友ッス!…あのさ、オレのこと単純ってよく言うけど、おまえも相当だと思うぞ。キラキラした目でありがとうって、でも意識は完全にビニールの中で。
あ、やっぱそっち選ぶんだな、シャリシャリの棒アイス。じゃあオレはこっち。
どっちともだんまりで食べる。夢中になりすぎとかじゃなくて、本当に暑いんだ、溶けるのは時間の問題。オレのはカップだからまだいいけどティーダのは。ああほら、もう溶け始めてる。ぽとぽと垂れてるぞ、早くしないと、それにバランス考えて食わないと、全部落ちちゃうぞ。
オレは心配して見てた。…つもりだった。けどなんか違う気もした、それだけじゃないような気がした。
アイスがうまそうで。オレも好きなんだそれ。目が離せない、アイスから、ティーダが持ってるアイスから、それも棒についてるとこじゃなくて、ぽたぽたしてるとこ。
ティーダの指に垂れるアイス。そこがすごくうまそうで。
じっと見てたら、オレの視線に気づいたティーダが顔を上げた。

何見てんだよ。目だけでそう聞いたら、ヴァンは不思議そうな顔して首を傾けた。いや、聞いてるのこっちなんスけど、何でおまえがそんな顔するんだよ。
今それどころじゃないから邪魔するなって。溶けるのが早いか、食い切るのが早いかのギリギリの戦い、わっ、た、やば!…あ、もしかして一口ほしいとか言う?だから今そんな余裕ないし、言うならもっと早く言えよな。
まあ、でも…この棒の真ん中らへんに絶妙なバランスで乗っかってるとこ、最後まで残しといて渡してやるってのならありかも。買ってきてくれた恩もあることだし…。
いや、やっぱやめた。オレは大口開けて最後の一口、残った分を一気に頬張る。
おまえとの間接キスなんてごめんだ。今日はそういう気分だから。

2019/8

 



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