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暇でぷらぷら歩いてたら、すげー珍しいものを見つけた。陰になってるとこに何かあるような気がして、見に行ってみたらそれは靴で。…あ、落ちてたんじゃないし、それが珍しいってわけでもない。持ち主はちゃんといて、珍しいと思ったのはそっち。
スコールだった。寝てたんだ。しかもこう…無防備な感じで。
普段は強がってるっていうか、なんつーか。気は許さない!って感じのやつだろ。それが安心しきった顔してすやすや寝てんの、オレはびっくりするどころか、何が起きたんだって思ったくらいだった。
だからつい、こっそり近づいて、まじまじと見てみたくなって。ふーんって思いながら観察して1分くらいたったのが今、もう起こさないようにってのは考えてないんだけど、スコールは寝たまんまだ。
こんなに気づかないなんて、疲れてんのかな。おーい。起きないと顔に落書きしちゃうぞ?いいのか?…自分のことは自分でどうにかするしかないだろ、なーんて、気張りっぱなしだからそんなことになるんスよ。
大人ぶったって、オレとそんなに変わんないのに。勝手なことを、ってスコールには言われそうだな、けど正直に感じたことだ。スコールの寝顔が子供っぽくって、起きてるときの印象とぜんぜん違うからだと思う。こんな顔してるんだーって思ったくらい。子供っぽいっていうか…かわいい、かも。
うん、かわいい。なんかだんだん、上着のふわふわもそれっぽく見えてきた。
猫みたいだ。…だからって、そのふわふわ撫でたくなったのは、何でかなのかは自分でもよくわからない。ふわふわだけじゃなくて髪の毛もまとめて、上から下へ。おお。これはけっこう、予想以上に。
「うわっ」
つい変な声出しちゃったのは、スコールがいきなり動いたからだ。起こしちゃった?ごめん。起こそうとしてたぐらいのはずが、オレはうしろめたくて慌てる。まだ何もしてない、落書きもしてないぞ。潔白を証明したくて手を開いてみせる。
その手に顔をすり寄せてきて、思わず固まった。…え?…はあ!?何やってんだよスコール!
おまえ本当に猫だったのかよ!オレが混乱して動けないでいるのをよそにスコールは、次に抱き寄せてきた、っていうか体ごとすり寄ってきた。うわ、うわわ。やめろよ、くすぐったいだろ。スコール、呼んでみても反応なし、目はうっすら開いてるけどぽわーっとしてるような、つまりは寝ぼけてるってこと?
おまえ寝ぼけたらこんなふうになるのかよ。そう考えたら笑えてきて、このままでもいいかなんて思ったりして。バッツあたりに教えてやろ。スコールってさ、寝ぼけると甘えんぼうになるんだぜ。
…そんなのんきなこと考えてないで、スコールの体を押し返そうとしてもびくともしないってことに、オレは早く気づくべきだった。
「ぎゃあ!」
情けないけど…後の祭りってやつ?
「か、噛んだな!?何すんだよ、おいスコール!」
「うるさい」
低い声、背中がぞくっとしてあわ立つ。
「おとなしくしろ」
何言ってんだよ、って合わせた目が凶悪に光ってて。
オレが目覚めさせたのは猫じゃなくて、実は猛獣だったみたいだ、…とか。
洒落になってねーっての!

2018/12

 



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