63 将軍入洛と警護

家茂公が入洛されるにあたり、二条城までの警護をすることになった。白バイ隊みたいなもの?

佐幕派の近藤さんは大張り切りで、当日の編成会議にも熱が入る。私は、山南さんの一件以来、

大幹部の話し合いの際はお茶出しを千鶴ちゃんに頼んでいる。伊東さんを見ると何か言ってしまいそうで。


会議も終わり、警備編成が発表された。将軍様の警護が出来るとあって、隊士たちも活気づいている。

「総司は今回、屯所待機だ。最近変な咳してんだろうが。ちゃんと治しとけ」

「やれやれ、土方さんは過保護だなぁ。まぁ、風邪気味なのは事実です、大人しくしてますよ」

「っ!!」

咳、という単語に反応する。総司が……咳? いつから? そういえば、帰京してからよく部屋に篭ってる。

前は千鶴ちゃんと私が家事をしていると、しょっちゅう邪魔しに来たのに。ひょっとして……。

嫌な予感が脳裏を駆け巡り、近藤さんの話も上の空だった。ふいに、袖を引っ張られる。

「千穂さん! 近藤さんが私達も同行していいって言ってくれましたよ! 伝達係りです。頑張りましょうね?」

「えっ? そうなの? うん、分かった。頑張ろうね」

相槌も適当に、解散後、総司を追いかける。怖いけど確かめずにいられない。

「総司、待って! 咳が出てるって、大丈夫なの?」

「ハハハ、千穂ちゃんまで大げさだな。大したことないよ。ちょっと風邪が長引いてるだけ」

「熱とかは? 夜に寝汗がひどいとか、ない?」

「っ! ……大丈夫だよ、大丈夫。……ありがとう」

「ちゃんとお医者様に診てもらって? 早めに薬を飲んだほうがいいよ。……お願い……だから」

「なんて顔してんの? ハァ〜まったく。わかった、ちゃんと医者に診てもらうから。
 
 警備について行くんでしょ? ほら、支度してきなよ」

「…………わかった。ちゃんと寝とくんだよ?」

不安と疑問を抱えたまま、警備隊の列に加わった。



「平助君も体調が悪いみたいなんです。昨日まで元気そうだったのに……。心配ですね、二人とも」

「うん、総司にはちゃんと医者に診てもらえって言っておいた。平助は食べすぎなんじゃない?

 千鶴ちゃんの料理が美味しいからって、おかわりしすぎなのよ」

「そ、そんな! でも一杯食べてくれるの、嬉しいです」

あ〜、いい嫁になるね。絶対奥さんにしたいタイプだわ。私の嫁にしたいくらいだね、うん。



二条城に着くと、要所要所に各隊が散らばり、私と千鶴りゃんはそれらを繋ぐ連絡係り。

トランシーバーがあれば一発なのに、本当に不便! しかも小走りで、結構疲れる。

何度か隊の間を往復した後、千鶴ちゃんと合流し、お城の石垣にもたれてちょっと休憩をとる。

息が上がり火照った体に、涼しい夜風が心地いい。見上げると、満月が煌々と輝いていた。

「雨にならなくてよかったね。でも移動する度こんな大勢に警備されてさ、将軍様って大変だね〜」

「本当ですね。すごく窮屈そうです。……! 千穂さん、上!!」

千鶴ちゃんに袖を引っ張られ、石垣の上を見上げると。…………人が……いる?



黒い人影が三つ、月光を背にして立っている。


何かゾクリとしたものが背中を這い、とっさに千鶴ちゃんを背に庇った。






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