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一度ある事は二度あるっていうけど、私は良い方に解釈している。
一度失敗してもチャンスはまた巡ってくる、という事。
現に私は――――
二度目の結婚で幸せを手に入れたのだから。
「総司〜、今日は道場に行くんでしょ? そろそろ起きないと!」
「起きて〜!」
「てっ!」
私に続く二つの声は、長男の大貴(だいき)五歳と次男の優貴(ゆうき)二歳八ヶ月。
大貴が階段の下から呼ぶ私を追い越し、裸足でペタペタと二階へ駆け上がっていく。その後を追いかけ、優貴もよじ登る。
……任せちゃおうかな、その方がはかどるし。
二人が上がり終えたのを見届け、私は朝食の準備に戻った。
しばらくして降りてきた足音は総司の物だけで、ん? と思いそちらに目を向けると、両腕に息子たちを抱えている。
「おはよう、今朝は何?」
「お弁当に詰めた残りとおにぎり。あっ、コラ! 大貴、テレビはご飯の後!」
腕から滑り降りた大貴の行き先を予測し、すかさず襟首を掴む。まったく、油断も隙もない。
総司から受け取った次男をチャイルドチェアに座らせ、めいめいのいただきますを聞きながら、自分も席につく。
日曜日の朝、家族揃った食卓。
戦争のように忙しくて、目と手が四つ欲しいくらいだけど。
自分ひとりでは叶えられない幸せが揃っていた。
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