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髪に、肌に優しい風を感じながら目を瞑っていたけれど、本当は眠ってなんていなかった。
一緒にいられる短い間に眠るなんて、そんな勿体無いことをするわけがない。
でも梗耶さんの膝枕で休む特権なんて他の誰にもないんだし、一度やってみたかった。
太腿が柔らかくて気持ちいいな、なんて思いながら狸寝入りいてたら風が止まった。
ばれたかな? 一瞬焦った僕の額に柔らかい唇が軽く押し当てられた。
一緒にかかった息で前髪が揺れてくすぐったい。
起きてびっくりさせようかとも思ったけど、君の秘かな悪戯と寄せられた優しい想いを壊したくなくて、
ありがとう、と心の中で呟いてそのまま目を瞑っていた。
ひょっとしたら梗耶さんはおまじないでもしたんだろうか。
気付いたら僕は、本当にそのまま眠っていた。
夢の中では彼女が僕の為に夕餉をこしらえていた。
さらに半刻後。ようやく目を覚ました沖田は、汗ばんだ肌と湿った体を起こし梗耶を見た。
壁に背を預け、片手に団扇を持ったまま正座で眠っている。
「ごめん、疲れたよね。梗耶さん起きて。そろそろここを出なくちゃ。……起きないと悪戯しちゃうよ?」
「ん……」
浅い眠りから戻ろうとしているその顔を突けば眉をしかめて目をギュッと瞑る。
「可愛いんだからしょうがないよね」
それにこうすれば起きるだろうし。
沖田は目を煌かせてにじり寄り、梗耶の頬を両手で包むと俯いた顔を軽く上げ口付けた。
緩く開いた唇に舌を差し込めば目を開いた彼女が驚いて袖を掴む。
そんな事はお構いナシに湿った口の中でクチュッと舌を絡ませ、水菓子を味わうように唇を食んだ。
「んんっ」
刺激で頬が染まっていく。袖を掴んでいた手が縋りつくようにキュッと力を込める。
可愛いな。やっぱり早く僕だけの物にしたい。
沖田は口づけで朦朧となっていく彼女を支えながら、一年先への計画を色々と考えた。
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