ぐちゃ、とひどく淫猥な音が響いて、虎徹は場にそぐわない苦笑を浮かべた。背後にのしかかっているのはどういうわけだかかわいいかわいい子憎たらしい相棒で、泣きそうな顔でペニスを突っ込んでいる。
「せんぱい」
ねえ、どうしてです?
そう続きそうな覇気のない声にまた苦い笑いがこみあがる。

なあバニーちゃん、俺が手馴れてたのがそんなに悲しいか?
ウブなふりをしてやることもできなくはないが、それでも熱い塊が進んでくれば息もつまるしイイトコロを掠めでもすれば体は正直だ、勝手に跳ねたり締め付けたりする。仕方ないだろ、慣れちまったもんは。
そんな体の、まあある意味最高に本能に忠実な反応に煽られたか、じわりじわりと入ってきていたそれが、残り半分位を一気に突き入れて来て星が散った。
「あ、バ、ニー、馬鹿おま、え、あ」
ぎゅう、と締め付けてしまうと形が伝わる。熱い。硬い。気持ちがいい。
と、次の瞬間無理に引かれて、思わず悲鳴があがるが、構わずに叩き込まれる。ぐり、と腰を回すように侵入して来たそれの先端が、したたかにツボをえぐったおかげで自分の息子がまた一段と反り返る。

あーもーこいつ、イケメンではじめてのはずの男相手のセックスの勘もいいってどういうこと。
思いながらも反応は止められず、喉は彼の狼藉を止めようと高く鳴く。
「あ、そこ、や、バニ、」
だが、執拗にそこを狙って、抜き差しをしている腰の角度を微調整しているバーナビーに制止の声など届くはずはない。
「ここですか、先輩」
ぐ、とビンゴの位置を先端から竿で抉るように突かれて、体が引きつるような快感の波が襲った。

「待て、まって、やめ、あ」
狙いすました早い抽送に耐えられなくなって、白濁が腹に伝い落ちているのを感じながら揺らされる。
「バニー、馬鹿ヤロー、イッてる最中くらい待て、よ、うあ」
「いやです、よ!」
オジさんの中、さすがビッチだけあって今ものすごく気持ちいいんです。
言いながら腰を打ち付けてくる。勘はいいとはいえ、悲しいかな若さのせいで動きが単純で、たしなめがてらぐうと締め付けてやると息を詰める。
突っ込んでいる側のはずなのに、恨めしそうに睨む目は欲に蕩けていじらしい。
荒い息のした、敷かれていた身体をゆっくりと立てて虎徹は紅潮した頬に音を立ててキスをひとつ。
「落ち、着けっつってんだよ」
バーナビーのそれを入れたままおきあがって、肩を押して跨る。角度や締め付けが都度変わって、お互いにゆったりと、なにか一つの大きく不器用な生き物のように蠢くたび、結合部や互いの腹に挟まれた虎徹自身やそこからの精液が、音を立てて二人を煽った。
「いいか、これ疲れるんだから一発で覚えろよ、」
言いながら、ぺたりと体重を掛けて飲み込みきった尻を、下肢にぐるりと擦り付けるように回してやる。鍛えられた腹筋や互いの陰嚢がこすれて深い所をかき回す。空気が少し入って余計に派手な音が鳴った。
深い繋がりに喘ぎながら、ただただ快感を求める体に忠実に、何度かぐりぐりとこすりついていたそれ。ひたりと白い手が絡まって先端を擦るのと同時、下からしたたかに突き上げる。

「っあ!」
高い声があがるのに、欲を隠そうとしていたのもかなぐりすてた、掠れた声が追い上げる。
「なんなんだよ、アンタ……どれだけ咥え込んだんだ、よ!」
片手で腰を支えながら、えぐるように打ち付けて、鈴口に指をねじ込むようにして。行為の最初から思い返して、彼が見せる反応がより大きかった所を丹念に思い出してはなるべく正確になぞって揺らす。
喘ぎながらも酸素を求めて息の荒い口元から一筋、唾液が落ちる。ふだんなら眉をひそめたくなるようなそれが、たまらなく欲しい。
突き上げながら、舌を出して喉元から垂れた唾液を舐めとって行くと悲鳴があがった。
「あ、や、バニー、そこ、や」
その、掠れて高い、腰に響く声。理性を壊して、持っていく。思わず声ごと飲み込むように、噛み付くように舌を絡めた。息ごと呑んでやってもなお、鼻から抜ける甘い声に、理性が飛ぶ。
「嫌じゃねえだろ、気持ちいいって言えよ、クソっ」
欲に溺れて崩れた口調にうっかりきゅんとして、虎徹の耳が律動のせいだけでなく赤くなる。
ああちくしょう、俺の相棒ってかわいいなあ。
思うと勝手に体が溶ける。そこにより深く強く、侵入してくるかわいいうさぎ。
「や、あ、そこいい、もっと、っ」
言うと、白皙を欲でどろどろにして、眉を寄せて、応えようと素直に突き上げる。
頭の良い人間程、一聞いた事は十理解して返すというが、このかわいい年下は正にそれだ。求めることの意図を正確に読んで何倍も気持ちよくしてくる。
勿論、こちらも出来るだけの技は尽くしてやっているつもりで、こちらからの奉仕ばかりが当たり前だった奴らとのセックスと、圧倒的に違うのはそこ。
ゴールが自分の快感だけでない、お互いを追い上げるセックスのなんて甘美なことか!

ぼんやりとそんなことを考えながら与えられる快感にあえいでいたら、こっちを見ろとばかりに喉元に噛み付いたバーナビーが恨めしげな目で睨みあげる。
その、少年じみた上目遣いに、虎徹は我を忘れる決心をした。

「な、もっと、混ぜるみたいに、ぐちゃぐちゃって、して」
「ん、そこ、あ、触って、」
甘い甘い、脳髄を溶かす声。けして女のような高い声ではないのに、いつもの通りのいい声が快楽に歪んでかすれて、囚われる。
初めて男を抱きたいと思った。この年上の男を征服して支配して、そして自分だけのものに出来たらと夢想して、ベッドに引き倒したらとんだビッチだった。
あまりのショックで萎えるかと思った。萎えてしおれてそのまま間違いになってしまえばよかった。それなのにどうだ、すっかりこの体に溺れて、こちらが虜にされている。
柔らかくもすべらかでもない、同性の年上を抱くのがここまでだなんて、思ってもなかった。慣れた仕草は心をささくれ立たせるけれど、それでも今この瞬間、よそ見ばかりで年上ぶったこの男の、全てを手中にしていると感じられる。
それだけで幸せな自分。
なんてお気楽で刹那的な考えかと思うけれど、それでも今、自分はそれでいいと、汗ばんだ肌を感じて思う。
「く、う、」
「な、気持ちい、だろ、っ?」
ぎゅう、と締め付けられて、声があがる。
自分だって欲に塗れて震えているくせに、尻に男を咥え込んで跨って、卑猥表現そのものの格好をしているくせに。
子供みたいに勝ち誇った顔でにやりとわらって、額に頬にキスが落ちる。その、幸せの塊みたいな笑顔。
ぞくりとするほど愛しさと、その余裕を剥ぎ取りたい欲が溢れた体が勝手に動いて、彼をシーツに縫い付ける。

「や、あ、上手いじゃねぇの、っ」
がつ、と腰がぶつかり合う音の中で、喘ぎ声と荒い息が交錯する。
余裕のない、早い抽送で追い上げるバーナビーに、焦点のうまく合わない潤み切った目で、必死で腕を伸ばして首に絡めて虎徹は顔を近づける。
舌をのばして、打ち付ける腰に脚を絡めて、少しでも深く多く、繋がろうと心が暴れる。まだだ、まだ遠い。
「どうされたいか、言ってみろ、よ」
「中、ナカに出し、あ、やべ、バニー、バーナビ、ィっ!」
「く、うっ……」
繋がったまま空中に放り出されたあとにやわらかな底なし沼に緩慢に沈んで行くような感覚。眉を寄せて目をつむって、びくびくと震えて吐き出すかわいい恋人に触れたい、と虎徹は思う。
けれども重たい体は指一本あがらず、思ううちにバーナビーが深く息をついて体を預けるように抱き付いてくる。
まだ若く美しい体。
ぎゅう、と腕が絡まって横臥させられて、ようやく腕が白い頬に触る。
荒々しい交わりのあと、そうっと撫でた頬は優しい。薄く目を開いたバーナビーと、どちらからともなく深いけれど情欲を含まない口づけをふたつ。
脚を絡めて繋がったまままどろんで、暖かいものが腹を満たす感覚はどこか懐かしいような、甘ったるい重みで虎徹を沈めた。
少しだけ先に夢をみはじめた男の安らいだ表情も、甘く甘く、ただ慕わしく闇に誘う。

少しだけ眠って、それから騒ぎすぎて乾いた喉をビールで潤そうと考えながら、虎徹も静かに目を閉じた。



xoxo







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