目がとろりとゆっくり瞬きを繰り返す。まつげをしぱしぱさせながらマグの中のコーヒーを口に含むのを眺める。
訓練の後でくたびれているのだろう、気だる気な表情が堪らなくセクシーで、バーナビーは気づかれないギリギリのラインで、隣に座る男を観察する。
気だる気に肘をついて、スポンサーから支給されている人気のタブレットに目を落とす。指がタッチディスプレイを叩いているのをみて、口元がゆるんだ。
半年以上も使って未だにフリッカー入力を知らないらしい。きっと、スクリーンショットの取り方も知らないだろう。もしかしたら、ホーム画面のロックもしたことがないかも知れない。
今度教えてあげよう、きっと大騒ぎしながら感動するんじゃなかろうか。

バーナビーは虎徹のパートナーになってすぐ、メディアに素顔を出していることもあって、虎徹のスポンサーからも自社製品をどかんと押し付けられた。それはあわよくばヒーローが日常でそれを使いでもした時の宣伝効果をよんだもの。
勿論、ワイルドタイガーの胸の真ん中に鎮座するシェアはいまいちながら魅力的なガジェットを提供したおかげで頭角をあらわしはじめた通信会社もすぐに手配して、人気のあまり世界的に品薄だった、虎徹と色違いの端末をぽんとよこして来た。バーナビーは適当に理由をつけてすぐに虎徹と同じ色に変えてもらった。だってお揃いの方が嬉しいじゃないか。
そしてバーナビーはせっせと不親切な操作案内を夜毎読み込み、よさそうなアプリは端からたたき込んであっと言う間に使いこなした。
もちろん虎徹と、「あっお前もか」「なんですかみないでください」「なーなーなんかいいアプリとかねぇの」(最後のセリフは自分からも可)という会話をする為の伏線である。しかし虎徹は使いづらいらしいそれをあまり頻繁につかおうともせず、バーナビーがそれとなくちらつかせながら使ってみせても反応がない。
だが、そんな機械に疎いところもかわいいなあ、とバーナビーは思って心の中でにやにやした。
勿論外面はポーカーフェイスを崩さない。
どうやらメールをうち終わったらしい虎徹が、ふうと息を吐いてキャスケットを脱ぐ。少し帽子の形に寝た黒髪が柔らかそうでバーナビーは横目でちらりとみたその瞬間を脳内ハードディスクに書き込んだ。
気だる気に息を吐いて髪をかきあげる仕草の色っぽさといったらない。
即座に共寝の次の日の朝を連想して幸せになる。まだ勤務時間外で食事にいったこともないが。

この人とコンビになれたことを、もう神様に感謝してもしても足りない。しかも、同じ能力。おそろいだ。これって身も心もひとつになりなさいって神様が立ててくれたフラグだとバーナビーは信じてやまない。ハレルヤ!
はじめは宣伝効果を狙ってスカイハイと組まされるはずだったらしいのだが、同じ能力で組んだ方が絶対にいいと、虎徹のデータファイルを見た瞬間主張した。
だってあんなガチムチよりずっとおじさんの方がかわいいし色っぽいじゃないか。隣におじさんがいるってだけで毎日出社するのが楽しい。

娘さんにはじめてあった時もあんまりかわいいからもう少しで叫んでしまいそうになった。先輩に似た口元と勝気そうにくるりとした目。奥さんがいたこともあると聞いてバツイチでも愛せると思ったけれどなんのなんの、こんなにかわいい子を残してくれてありがとう奥様!とベッドの中で感謝の祈りを捧げてしまった。僕はあの子のいい親になってみせますとも誓ってしまった。あれ以来しゃべったことないけど。

人懐っこい先輩は僕をなんだかんだと構ってくれる。ものすごく嬉しい。それでもあくまでクールを装ってみせている。恋人になるには、手練手管でこっちを気にさせておかないと逃げられてしまうから。

それにしてもかわいいなあ。あっ、あくびした。写メりたい。


なんか最近いっつもみられてる気がしてキモチワルイ、と虎徹がぼやく。
なあおい気付けよお前、ヒーローだろ。
お前が寄っ掛かってる俺にものすごいガンくれてるかわいいかわいいバーナビーをとりあえずなんとかしてくれねえか。




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