03
もう、話しかけてはこないだろう
そう思っていたが
次に、あいつが話しかけてきたのは、その日の放課後だった
「ねぇ、好きなもの何?」
「…はぁ?そんなもの聞いてどうするってんですかぁ?」
「いや、授業中にね、好きなものなんだろうて考えてみたんだけど、よく考えたら初対面なのに好きなものがわかるはずがなかったので、聞いてみた」
よぉするに、こいつはオレ様にさっきのお礼を今まで考えていたがぁ、好きなものが思いつかなかったのでぇ、それなら直接本人に聞こうという結果になり今に至るらしい
たかが気まぐれ程度のことにお礼とか無駄に律儀なやつだねぇ…
「…んなもの、いらねぇですよぉ」
「いや、それじゃ私の気がすまないの!迷惑かけたし、何か奢るとか、パシりでも何でも一つだけ何でもお願い聞くからさー!ねー?」
おそらく、さっき言ったことでも気にしてるんだろうなぁ
ケケケ、別にぃからかっただけでぇ本気で言った訳でもないのにねぇ
お礼とかそういうもん、めんどくせぇから断ったが引き下がるつもりはないらしい
逆にこれが迷惑になるかもとは思わないんですかねぇ?…
というか、こいつぅ…オレ様のことが怖くないんですかねぇ?
そう思ったら何故かわからないが口が勝手に動いてしまっていた
「おまえぇ、オレ様が怖くないんですかぁ?」
「え?別に?ちょっとだけ言い方きっつい人だなーとかくらいかな?…あ、いや!もの貸してくれるしいい人だとも思ってるよ!うん!」
なぁんて、平気で言ってくる辺り本当に怖くはないらしい
というかぁ、いい人ぉ?オレ様がぁ?
ふん、変なやつだねぇ〜
まぁ、でも、何でも聞いてくれるっていうんですからぁ〜、しょうがないので、お願いしてあげましょうかねぇ?
「…まぁ、それなら別にいいんですけどぉ〜それよりさぁ、何か苦手な事とかあるぅ?」
「ん?苦手な事?料理は苦手だけど…」
「ふぅん、料理、ねぇ?…じゃあ、弁当手作りしてきてくださいよぉ?」
「はぁ!?何で!?今、苦手っていったよね!?そんなのお礼になんてならないでしょう!?」
「オレ様がぁ、それがいいって言ってるんですからぁいいでしょうがぁ?なぁんでも言うこと聞くっていったのはぁ誰でしたかぁ?ねぇ?嫌なら別にぃ〜お礼なんてなくてもいいんですよぉ?」
「……いい性格してんねぇ」
「ケケケ、そいつはどうもぉ〜」
「……………」
ケーケッケ、思った通りの反応だぁ
そのまま諦めて、オレ様に関わるのはもうやめてしまえぇ
じとーーっと無言でオレ様の方を見ながら考えている神田飛鳥の反応を、ニヤニヤしながら待ってみた
「……わかった、わかったよ!!作ってくればいいんだね、このやろー!!後悔してもしらないんだからねぇえええええ!!!!」
「…はぁ!?ちょ、待てって!」
クルッと背を向けたかと思えば、そう叫びながらダッシュで神田飛鳥は走り去っていきやがった…
「…マジですかぁ?」
予想外の答えと行動に、その場で立ち尽くしてしまったオレ様は1人そう呟いた…
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