禍ノ子
 人妻編 / 英人


 滞りなく、陰部洗浄は始まった。
 尻の下にオムツシートが敷かれ、お湯の入った洗浄ボトルでピューッと局部が濡らされていく。
 一瞬漂ったむず痒い雰囲気など、忽ち消えてしまった。それどころではない。なんとも言えない心地に悶絶している内に、石けんのついた柔かなガーゼが亀頭部に押し当てられた。
 澄緒の長い睫毛は何度も真剣に上下し、さらさらの黒髪は股間の上で素直に揺れている。
 時折香る生っぽい肌の匂いにあてられた英人は、すぐに勃起した。
 しかしそこは澄緒も承知済みらしく、むしろ丁寧すぎるほど、汁を零す鈴口の割れ目を拭っていく。

「……っう」

 澄緒のガーゼは繊細な裏筋を通り、太い幹をすべり、重たく垂れ下がった陰嚢の裏側まで優しく撫でた。ジャングルと化した陰毛も泡立つほどかき混ぜられて、潔癖症である事を感じさせない仕事ぶりに感動すら覚える。
 ここは天国か。
 このまま時が止まればいい。いや、永遠に澄緒の手で股間を撫でられていたい。

「洗い足りないところはあるか?」

 ありません、完璧です副長。
 しかしここで正直に答えてしまっては、もったいなさすぎる。
 英人は堂々と嘘をつく事にした。

「あー……先のほうがまだ痒い」
「この辺りか?」
「いや、もうちょっと左」
「ここか?」
「あ……もうちょい、右。裏筋のとこも、擦ってくれよ」
「んん、えっと」

 困ったように首を傾げた澄緒の顔が、徐々に近づいてくる。伏せられた目元は、心なしか染まって……いや、いつもこんな顔だったかもしれない。泣いた後みたいにいやらしい表情は、彼の通常オプションだ。
 艶っぽい唇は、微かに開いている。まるで熟れた柘榴のように果汁が滴りそうで、見つめているだけでおかしな気分になってくる。そこを無理やりこじ開けたら、やっぱり嫌がるのだろうか。
 粘膜の色は? その柔らかさは? 妄想するだけで達してしまいそうに上質な湿潤地帯。そこを好きに蹂躙している男はやはり複数存在するのだろうか。
 それなら……それなら、自分だって。
 澄緒の白い頬が変形するくらい陰茎に吸いつかせて、細い喉に亀頭を無理矢理ねじ込んで、ぐちゅぐちゅ言わせながら射精してみたい。無理矢理白濁を飲ませて、汚れた尿道の中までちゅうちゅう吸わせて、恍惚とした表情で雄を悦ばせる澄緒が、自分だって見てみたい。

「……英人?」

 あ、やばい、まじで出る。

「っ!」

 逞しい想像力で勝手に達した息子から、熱い白濁がびゅくっと噴き上がった。数日溜め込んだ精液は、英人にもコントロールする事ができない。

 びゅっ、びゅくッ、びゅる!

「……っ、く……はあっ、止まんね……」

 そんなつもりはなかったのに(いや、少しだけそのつもりだったが)性の飛沫は、美しい澄緒の顔を汚した。頬に命中した濃い精子が、口元のほくろをつたって、下唇のあたりで卑猥に垂れ下がっている。
 エロい。最高に興奮する。

 しかし、そこで初めて無言で固まる澄緒に気がついた。

「澄緒、さん……?」

 様子を伺うように、白濁まみれの顔を覗きこむ。途端、ぐらりと傾いだ澄緒は、英人のほうへ倒れてくるとそのまま気を失ってしまった。


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