禍ノ子
 天使編 / 邦彦


 ちゅっ……ちゅく、……っにゅる

 静かな病室に響く、卑猥な音。
 グミのような感触の肉粒を甘噛みしつつ、ぐちゅぐちゅに唾液を絡めて吸い付く。
 男の胸に翻弄されるなど、冷静に考えたらあれな光景だ。しかし、中性的な凪の雰囲気がそうさせてしまうのか、全く違和感はない。
 それどころかものすごく癒される。
 抱き締めた体の柔らかさや、優しく撫でてくれる手には、本当に治癒効果がありそうだ。

「んっ……」

 弾力を増した乳首を弄る度に、凪の唇は快感に濡れた溜め息を溢した。唾液まみれにしても、いやらしく摘まんで引っ張ってみても、ちっとも嫌がらない。むしろ淫らな扱いをすればするほど、匂い立つような色香を放つ。

「凪さんって、おっぱい出そう……」
「どうかな、ふふ」

 変態っぽい言動にも微笑む余裕を見せた凪は、ベッドに後ろ手をつくと、邦彦の不自然な膨らみをゆるりと撫でた。

「ここ、苦しい?」
「そ、そこは、いいです! 風呂入ってないですから……って」

 さっさと邦彦の病衣をずり下げた凪は、恥ずかしい状態のボクサーパンツを露にした。

「すっごく大きい……、ぴくぴくしてる」
「な、凪さん、」

 隆起したラインをなぞりながら、染みの出来た前合わせの隙間に指を引っかける。
 いや、まさか……そんな!

「お風呂禁止は一週間……だったよね」

 悪戯そうに上目使いで確認すると、そのまま鼻を突っ込まれた。

「……ッ!」
「んわ……っはぁん、すごい」

 羞恥に固まる。数日分の汗と垢にまみれた性器に鼻先を擦りつけた凪は、大きく息を吸い込むと恍惚とした表情を浮かべた。

「こんなに恥ずかしい臭いなのに、エッチなお兄さんに誘われちゃって……ふふ、かわいそう」
「……そ、そんなに、嗅がないでください」
「大丈夫、今綺麗にしてあげるから」
「待っ、うおぁっ」

 繊細な舌先が、皮の隙間を這っていく。バターのように付着した恥垢を探り当てると、ビロードを思わせる舌の上に白い汚れが伸びた。

「もう、こんなになるまでおちんちん汚しちゃだめ」
「ああーっ、あ、だめです、そんなの舐めたら、腹壊すから……って、う……っぁ!」

 唇の粘膜で亀頭を包まれ、小さな割れ目をぬろりとなぞられる。鈴口の隙間に舌先を差し込まれる慣れない悦楽に、思わず腰が浮いた。

「あっ、あ、やめて、凪さん」
「おしっこ出そう?」
「ッち、違うものが出そうです!」
「……じゃあ、このままエッチしちゃおうか」

 瞬間、ぞわぞわと背筋が粟立った。

「だ、だめです……それは、」
「どうして?」
「お、俺、その……」
「?」 
「……は、初めては好きな人とって決めていて」

 真っ赤になった邦彦の初い返答に、凪の瞳がくるりと色を変える。

「ふうん……ね、僕のこと好き?」
「……ッ、大好きです!」

 半透明の翡翠に見つめられた邦彦は、誘導尋問の如く、あっさり即答させられた。


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