贖罪ノ子
全テノ始マリ / 龍二
雛城八重と出会ったのは、八歳の春だった。
特別候補生の訓練を終えた向島龍二は、吹き抜けから太陽の光が差し込む、芝生の茂る中庭で、友人たちと缶けりをして遊んでいた。
肌は日に焼け、賢く強い光を宿した瞳の龍二は、じゃんけんに負けてオニになると、早速缶の上に足を乗せて数を数え始めた。
「いーち」
少年らしくよく通る声は、高く高く吹き抜けを突き抜けていく。
「にーい」
それは、どこまでも、どこまでも、まるで誰かを呼ぶように、響き渡った。
「さーん」
「ねえ!」
少し高い声に、龍二ははっと瞳を開けた。茶色くてまるい瞳がこちらを見上げている。
それが、始まりだった。
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