思ノ子
 失思ノ子 / 篤


 薫の消え入りそうな告白は、篤の起爆剤となった。
 今度こそ我慢の限界だ。
 そんなに可愛いことを言って自滅するのは薫なのに、ちっとも分かっていない。でも、そこが可愛いんだから、仕方がない。
 さっきしたばかりの誓いをかなぐり捨てた篤は、解した僅かな隙間に亀頭を押し込んだ。

「あっ、あ!? 篤っ、痛い」
「俺もお前が好きだ、誰にも渡さない」

 規格外の自分の性器が、受け入れる薫を苦しめているのは分かっている。けれど、かえって絡みつく粘膜の熱さは薄皮を通してダイレクトに伝わり、まるで癒着しそうなほど気持ちが良い。
 やばい、もう出そうだ。

「あ、いたい、篤っ……いたいよ」
「好き、すきだ……、薫、好きだ」
「……っばか」

 どうして俺たち、もっと早くこうしていなかったんだろう。
 組み敷いた薫の髪はシーツに乱れ、薔薇色の頬はいろんな体液でぐちゃぐちゃだ。白い陶磁器みたいな体にはいくつも赤い跡が咲き、なだらかな腹は、痛みを耐えて何度も膨れてはひっこむ。
 綺麗だ、薫。

「薫、大好きだ」
「……ぼ、くも、ぼくも、すき、……っあ、あ、だいすき」

 自分の性器が埋まった腹を、両手で確かめるように、ゆっくりと撫で擦る。そのまま抉った最奥に、こつんと亀頭が触れた。

「ぅあッ……!?」

 電流を流したみたいに、薫が痙攣する。
 腰を密着させながら恥骨を動かすと、こつこつと何かに触れた。

「あうっ、あ、いやだ、そこ、アッ、いやぁっ!」
「なんだ、ここ……やべー」

 きつく締まった薫の内側が、複雑な動きをする。充血した敏感な粘膜は、篤を咥えこんで離そうとしない。
 頭が沸騰しそうだ。重く垂れさがった陰嚢が薫の尻たぶを打つほど、激しく腰を動かす。
 ほとんど泣き叫ぶ薫の唇に、許しを乞うような口づけをしながら快楽を追う。絡み合った体は熱く蕩けて、お互いの境界がぼやけ出す。
 
「うあッ、あん、痛いよ、あつし、あァ、あ……ッ!」
「……っく、は」

 猛然と腰を揺すり、少し危ないと感じるほど奥に自分の体液を迸出する。
 行き場をなくして逆流した白濁が、泡立って結合部から溢れた。

「あ……、薫?」

 掠れた声で名前を呼ぶ。
 いつの間にか、薫は腕の中で弛緩していた。どうやら気を失ってしまったらしい。

「……やばい……、やりすぎた」

 全く自制が効かなかった。
 汗ばむ体をそっとベッドに横たえて、様々な体液に濡れた肌を拭ってはみたが、後の祭りとはこのことだった。
 徐々に窓の外が白み始める。そろそろ深夜警備を終えた刀真も帰ってくるだろう。
 明るくなる室内と共に、薫の姿も鮮明に浮かんでくる。白く輝く肌、少し隆起した胸、色素の薄い乳首は水彩絵の具の桜色を滲ませたようだが……、顔が真っ赤だ。
 情事の後ではあるが、それとは少し違う気がする。
 確かめるように額を合わせると、篤は泣くに泣けない自分の未熟さに落胆した。
 薫は発熱していた。

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